2015年6月13日より全国公開
アスミック・エース
公式サイト
1983年、オランダのアムステルダムで、世界有数のビール会社の経営者アルフレッド・ハイネケンと運転手のアブ・ドーデラーが武装した5人の若者に誘拐された実話を映画化した本作。犯人グループは個人の誘拐としては史上最高額の3500万ギルダー(現在の日本円に換算すると約23億円)の身代金を要求し、オランダのみならず、世界中の注目を浴びるニュースだったようです。ハイネケン役は、名優アンソニー・ホプキンスが演じていましたが、誘拐されながらも自ら犯人たちと“交渉”するシーンは、ハンニバル・レクター博士を彷彿とさせる心理戦でドキドキさせられました。主犯格を演じたのは、ジム・スタージェス、サム・ワーシントンでしたが、貧しい暮らしに辟易して大犯罪に手を染めていく男たちの心情の変化をリアルに映し出していました。大胆不敵な作戦を実行しつつも、ことの重大さがリアルになってくると怯えてきて逃げ出そうとする犯人たちの心理描写がとてもリアルで、人は行き詰まったときに何をするかわからないものだなとゾッとする部分もありましたが、映画の最後に彼らが最後どうなったかを知り、切なくなりました。当時のオランダの社会情勢は具体的に知りませんが、貧困社会が生んだ犯罪という部分もあるのかなと思いました。とはいえ犯人たちに同情することはなく、ハイネケン自身のキャラクターについてもあまり深く語られることはなかったので、どちらかに荷担して観ることはありませんでしたが、敢えて社会を客観視させるような描写が良かったです。ハイネケンのセリフのなかに印象的なものがあり、「裕福の種類は二つあって、それはお金がたくさんあるか、友達がたくさんいるかということ。でもその二つは両立できない」ということでした。ただ史実を映像化するだけでなく、こういうところにメッセージ性をさりげなく入れてくる見せ方は見事です。とても深いですね。 |
ロマンチックな部分はあまりないですが、雰囲気を盛り上げる目的でないなら、デートで観るのもアリです。犯罪まではいかなくても、危ないことをやらかす傾向になる彼氏、旦那には、お灸を据える意味で一緒に観ても良いかも知れません。お金がないと生活が苦しくなるのは当然で楽な稼ぎ方があれば誘惑されてしまうかも知れませんが、それだけを求めれば、生活は崩壊するということを目の当たりにさせられる本作を観たら、真面目に生きるのが一番と思えるでしょう。 |
仲良しグループが協力するのは良いですが、悪いことをする仲間になってはいけないというのがよ〜くわかる物語です。悪いことに手を染めると、友情も生活も壊れていきます。大事なものは何なのかということや、お金では買えないものがあって、それは生きていく上で何よりも大事だということを、本作を観て、改めて気付いてもらいたいと思います。友達が間違ったことをしようとしたら、仲良く一緒にやらずに反対する勇気も必要です。たとえ強い友情でも、一緒に堕落したらおしまい。 |
関連記事:
■TJE Selection イイ男セレクション/ジム・スタージェス
■TJE Selection イイ男セレクション/サム・ワーシントン
© Sofie Silberman 2014 © Ben Rothstein 2014
2015.6.8 TEXT by Myson