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ビッグ・シックぼくたちの大いなる目ざめ

2018年2月23日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト

本作は、アメリカで最初5館から劇場公開し、口コミで人気を得て、2600館まで広がった話題作。パキスタンで生まれシカゴに移住した主人公クメイルが、厳格なイスラム教徒である両親の願いと、自分が望む夢や恋愛との狭間で苦悩する物語です。家族のルーツや、親が信仰する宗教がここまで子どもの人生に影響力を持っているという感覚に驚かせられながらも、広い視点で考えると、親の意向と子どもの意向が違って苦労するのは、誰でも体験すること。だから、遠い話には思えないし、親の深い愛情をわかっているからこそ、表面的にだけでも合わせてしまうクメイルの気持ちにも共感できます。でも、このストーリーで驚くべきところはそこだけではないんです。クメイルの恋人でアメリカ人大学院生のエミリーが、原因不明の難病に襲われます。ある意味これがきっかけで、クメイルは本気で自分が望む人生にちゃんと向き合うようになるのですが、このあまりにドラマチックな内容は、実話であり、主人公を演じるクメイル本人が体験した話なんです。
この作品が良いところは、中盤から、重いテーマを扱いながら、コメディ調に軽快に進んでいくところ。全体的にはハッピーな雰囲気が漂っていて、涙あり、笑いありで、結末も清々しいです。コメディアンのクメイルが主人公で、製作は、数々のコメディ作品でヒットを生み出したジャド・アパトーが担当しているので納得ですね。こういう作品が、9.11以降、さらにトランプ政権下で分断されつつあるアメリカで、大ヒットする状況にあることにも、少し希望を感じます。

ルーツが全く異なるカップルが苦悩するストーリーなので、似た状況にある人は、気まずく思えるところがあるかも知れませんが、良い意味で触発されると思います。また、そういう話を避けているカップルは、これを機にじっくり話をすると良いでしょう。これは実話なので、こんなに大きな苦難を乗り越えたカップルがいるのだと思うと、勇気がもらえますよ。

社会的背景がある程度わかっていないと、すんなり物語に入り込めない部分もあると思いますが、小学校高学年以上なら、ついていける内容だと思います。ただ、テーマ自体は重く、根本は大人向けの内容なので、大学生や社会人になって、環境が全く違うところで育った人と触れあう機会が増えてから観たほうがリアルさが増すと思います。

2018.2.14　TEXT by Myson

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ

ビッグ・シックぼくたちの大いなる目ざめ