2011年5月13日より全国公開
20世紀フォックス映画
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意地悪で不条理で哲学的なストーリー。こういうの大好きです。“完璧”って何なのかが1つのテーマなのですが、完璧な踊りを心がけるがあまりに演出家のニーズを満たせないバレリーナの苦悩が描かれているのですが、最後に彼女が達した“完璧”の境地がとても興味深いです。「人は完璧でないのが完璧だ」ということなのかと分析してみましたが、観る人によっていろいろな解釈ができそうなのが本作のおもしろさです。あともう一つのテーマは「女としての美しさ」ですが、対照的に登場するミラ・クニス演じるライバル、リリーの美しさと、主人公ニナの美しさの違いは一体何なのか?見た目に美しいだけではない、男を引き寄せるものとは何なのかということを、白鳥の湖のストーリーに沿わせて描いているのもうまいですね。周囲を見ても「あの人はすごく綺麗なのになぜ男っ気がないのか」という人がいますが、そんな不思議を解明してくれるような要素が本作にはあります。 あと、今回なんと言っても見どころはナタリー・ポートマンの演技です。自慰行為をするシーンや、ミラ・クニスとの同性どうしの濡れ場もあったり、ナタリーの清楚なイメージがあるからこそ衝撃的に見えます。そしてこういう大胆シーンは別としても、狂気に満たされていく演技もリアルでした。それとミラ・クニスもかなり良かったです。この自然に漂わせるエロさはすごいですね。『ザ・ウォーカー』での役とは別人に思えたので、演技力があるのだと思います。彼女の今後にも期待です。 最後に、ダーレン・アロノフスキー監督作『レスラー』との比較ですが、同様に仕事に全てを捧げ自虐的になる主人公というところは共通してましたが、本作のラストの主人公の感情表現は意外でした。2作の違いは「ある種の答えを見つけたか、そうでないか」なのかなと思いました。そんなところにも注目しつつ、とにかく『ブラック・スワン』はあらゆる点でぜひ女性に観て頂きたい作品です。 |
一人で観に行くか、女性だけで観に行くかが良い映画だとは思いますが、語り甲斐のある映画ではあるので、カップルで観てもおもしろいかも知れません。でも、まだ初々しいカップルだと目のやり場に困るシーンもあり、かなり大人の話題も入っているので、そのあたりを良しとするかどうかで一緒に観るかどうか選んでください。そういうのは平気だよというカップルならば、特に仕事熱心な人にはぜひ観てもらいたいです。何かに没頭して自分を見失ってしまったり、男女問わず主人公に共感する部分もあると思います。結末をみて「これが幸せだ」と思うか、「こうはなりたくない」と思うかで二人の価値観がわかりそうです。 |
©2010 Twentieth Century Fox
2011.2.27 TEXT by Myson