小説好きのパン屋のおじさんが、イギリスから向かいの家に引っ越してきた妻に好奇心を抱き、彼女の名前がたまたまボヴァリー夫人ということから、小説「ボヴァリー夫人」と重ね合わせて妄想を膨らませるという設定なのですが、おじさんのただの妄想を描いているわけではなく、捻りの利いたミステリアスな展開があり、最後に真相がわかるまで楽しめます。小説の「ボヴァリー夫人」の物語そのものが彼女の退屈な日常を描いているからこそ、この映画に出てくる女性ジェマととリンクする部分もあり、観ているこちらもだんだんパン屋のマルタンと同じようにジェマとボヴァリー夫人の物語を混同してしまいそうな感覚になるのですが、そこまで引き込んでおいての“あのラスト”に「やられた!」と感じました。とても皮肉が効いていてユーモラスで、実際に起きたら笑えない出来事ながら、映画だからこそ笑えちゃう結末です。
監督は『美しい絵の崩壊』のアンヌ・フォンテーヌ。今作では男性が主人公ですが、女性監督だからこそ、男性描写が女子が共感できる演出になっていたように思います。だからマルタンのジェマに対する反応がいちいち笑えてしまうというか、キモいのすれすれで、同時に愛らしくも見えるんですよね(笑)。マルタンを演じるファブリス・ルキーニは、『屋根裏部屋のマリアたち』『危険なプロット』でも素晴らしい演技をみせてくれましたが、本作では小説好きのちょっとヤバいおじさんを好演。監督の演出と、名優の演技で、男の哀愁と滑稽さが絶妙なバランスで描かれています。そして、ジェマを演じたジェマ・ア−タートンも役にピッタリでした。キレイに見えたり、垢抜けない姉ちゃんに見えたり、視点によっていろいろな顔を見せる“あらゆるジェマ”を見事に演じていたと思います。
最後に、印象的だったセリフを一つ。マルタンが「平凡な女は、人生に退屈しない」という内容のセリフを言うのですが、とても意味深く感じました。平凡な女なら人生が退屈かどうかすら考えもしないということなのかなと私は解釈したのですが、的を射た理論にも思えるし、女をよくわかっていない男の戯言にも思えるし、どっちなんでしょうね。その答えは、人それぞれだと思いますが、ぜひ映画を観て考えてみてください!
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官能シーンはそれほどいやらしくもなく激しくもないのですが、優しくて誠実な夫がいながら、退屈な毎日に心が彷徨っている女性を描いているので、カップルで観るには不向きだと思います。男子もパン屋のマルタンと同じく妄想にふける楽しみを得るなら1人で観に行く方が気楽でしょうし、女子もジェマの視点で楽しむなら1人で観るか、女友達と観る方が心起きなく楽しめるでしょう。 |
性的なシーンが出てくるし、おじさんの妄想が暴走する物語なので、キッズにはまだ理解し難いし、不向きです。ティーンもウブな中学生にはもしかしたらまだ刺激が強いかも知れません。大人向けの作品なので若者が観てもまだピンとこない部分は多い気がしますが、大学生以上なら文学的視点で楽しめるかも知れませんね。 |