てっきり虫が大量発生して…というパニック・ムービーかと思ってましたが、全然違いました。でも『エクソシスト』のウィリアム・フリードキン監督作ということで、クレイジーさは予想通りでした。主人公が果てしなく被害妄想を膨らませ、全てのできごとを虫に結びつけるくだりは、正気の状態からすれば当然ありえない筋書きだと思いますが、被害妄想の威力が果てしなく大きくなるとその人にとっての現実は本人が思ったとおりにしか見えないという恐ろしさを描いています。 始め主人公には既に元夫への恐怖があるのに、関心が虫に変わると、元夫のことはもう怖くなくなっていて…という状況も、恐怖を紛らすのが別の恐怖という皮肉を感じました。物語はほぼ主人公が住むモーテルの一部屋で展開しますが、物語のテーマを広く解釈すると、一般社会もこれに似た現象があるような気がします。一つの事件や事故の話題に不安がっていたと思ったら、次の悪いできごとがテレビなどで報じられると今度はその不安でいっぱいになる。恐怖は連鎖するし、どうにでも変容する。そんな社会風刺にも感じられた作品でした。 |
2012.12.20 TEXT by Myson