2011年10月1日より全国公開
クレストインターナショナル
主人公アシェンバッハが惚れてしまう、タジオ君が本当に美しいです。お人形みたいで、中性的な感じ。そして、ふと見つめる視線がアシェンバッハを虜にしていくんですが、自然にしているのに妖艶な感じは、本人から出てくるものなのか、監督の手腕なのか、ほとんど言葉を発しないで演じているタジオ君役のビョルン・アンドルセン(当時15歳)がすごいと思いました。彼はヴィスコンティ自らがヨーロッパ中を探し回り見つけたスウェーデンの少年です。で、アシェンバッハの方もキャラクターが濃くておもしろかった。主人公とモデルとなったのは、ロマン派の大作曲家グスタフ・マーラー。マーラーの「交響曲第5番嬰ハ短調〜第4楽章(アダージェット)」は本作の主題歌に使われているけれど、きっと皆さんも聞いたことがあるはず。この曲が主人公がこれから体験する心の旅を表しているかのうでした。映画音楽って、脇役に思いがちだけど、こういうセリフの少ない映画だとより際立つし、とても効果的に使われていて、音楽も楽しめました。 そして、ストーリーの方はアジェンバッハがひたすらタジオ君を目で追いかけ、心を奪われていく様を映している感じですが、「初恋か!」とつっこみたくなるほどアジェンバッハおじさんがうぶでかわいいです。まあ現代だとストーカーだと言われかねないんですが、タジオ君もまんざらではないのか、立ち止まって見つめたりしちゃうんですよね。そりゃ、おじさんも悩殺されますわ(笑)。あと印象的だったのが、アジェンバッハが理容室?美容室に入って、化粧をしてもらうところ。当時のヨーロッパではこういう男性の化粧が普通だったのかも知れませんが「顔白っ!」と笑ってしまいました。でも好きな人ができると綺麗になりたいと思ったり、実際に綺麗になっていく…というのは女性だけではないんだなと思いました。そしてラストシーン。タジオ君のあのポーズが気になりますが、原作にある「ギリシャ芸術最盛期の彫刻作品を思わせる」というイメージを演出したんでしょうね。 「美の価値観」「完璧とは何か」みたいなセリフも出てくるのですが、文芸作品としてももちろん楽しめますが、普通に人間ドラマとしても楽しめました。こういう古き良き時代のクラシック映画は、1つの文化としての映画の価値に改めて気づかせてくれる財産ですね。 |
クラシック映画なので、普段あまり映画を観ない人にとってはちょっと敷居が高いかも知れませんね。作品はおもしろいんですけどね。芸術家とは言え、おじさんが少年に心奪われるというお話なので、そういう類のことに偏見のある男子は嫌悪感を示すこともあるでしょう。優しい目で主人公を見てくれないと本作の世界観は楽しめないと思います。でも、「おれは映画好きだよ」と豪語している男子には試しに見せてみると良いでしょう。本当に映画好きかがわかると思います。 |
DEATH IN VENICE c 1971 Alfa Cinematografica S.r.l.
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2011.9.3 TEXT by Myson