本作は、1942年のポーランドでワルシャワのゲットーから脱走し、名前を偽ってポーランド孤児として3年間1人で生き延びた少年の実話を映画化。この原作は日本では「走れ、走って逃げろ」というタイトルで2003年に出版され、世界17ヵ国でベストセラーとなっているようです。前半は主人公の少年が徐々に知恵を付けていき、ギリギリのところで困難を切り抜けていく様子を応援するような気持ちで見守っていたのですが、後半はあまりにも過酷な状況が描かれていて、実話である事を否定したくなるほど辛い内容でした。家族を失い8歳の少年がたった1人で生き延びるには、ユダヤ人である事を隠して、誰かの家で働きながら面倒をみてもらうしかありません。でも名前を偽るだけでは隠し通すことができず、割礼していることでもユダヤ人である事がばれてしまうので、子どもながらに遊んでいるだけでふと身分がばれてしまうことに繋がったり、油断できない緊迫感のなかでこれだけ幼い子どもが生きていくことがいかに難しいかが実感できました。そして、こんなに辛い思いをしているのに親切にしてくれる人に優しさを忘れず、恩を忘れず、迷惑をかけまいと振る舞う少年の姿にとても心を打たれ、立派な生き方に大人も子どもも関係ないなと思いました。「お父さんやお母さんのことは忘れても、ユダヤ人であることは忘れるな」と言ったお父さんの言葉と、少年の「ユダヤ人だから**(ネタバレになるので伏せます)を失ったんだ!」というセリフがとても印象的だったのですが、命の危険が及んでもユダヤ人であることに誇りを持って生きていくという大人の概念と、子どもながらの正直な思いの対比が見えて、その行く末に彼がどちらの名前を選んで生きていくのかという決断にいろいろと考えさせられました。本当に想像を絶するストーリーだったのですが、人間の優しさも描かれていた部分に、希望を感じることができました。どんな人間として生きていきたいかと問うてくるような映画です。自分のルーツ、価値観、いろいろなことを考えるきっかけに観て欲しいと思います。また少年役には700人のオーディションから双子のトカチ兄弟が選ばれ、外向的なアンジェイと内向的なカミルが、アクティブなシーンと情緒的なシーンを演じ分けているそうなのでその辺りにもご注目ください。
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主人公の少年がとても可愛くて、彼の優しくて逞しくて愛らしい姿に癒される部分もあるのですが、辛い状況に陥るシーンが多々あり、目を覆いたくなるようなシーンも一部あるため、デートで観るには不向きでしょう。2人とも観たいならば良いですが、1日でいろいろなメニューをこなすデートではなく、観るならば映画をじっくり観ようという日のデートで観てください。でも、テーマとしては人生観を問う内容なので、真剣交際の相手と観て感想を言い合うのは有効だと思います。 |
8歳の少年が主人公なので、同じ年頃のキッズが観ても感情移入して観られそうですが、ビジュアル的に子どもには辛すぎるシーンが一部あり、またユダヤ人の迫害についてや、ドイツ、ポーランド、ロシアなど国家間の関係性についても少しわかっていた方が理解が深まるので、やはり観るなら中学生以上のほうが良いように思います。今の日本は平和なので普段自分がどこの国の人間なのかを自覚しなければいけない状況は少ないと思いますが、主人公の境遇を観て、時代や国が違えばこういうことがありえるということは知っておいて欲しいと思います。 |