2016年6月11日より全国順次公開
ビターズ・エンド
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トルコの小さな村を舞台に、児童婚という今もなお残る封建的な慣習を描く問題作。日本人の立場から観ると、時代錯誤でナンセンスとしか思えないしきたりも、宗教的な思想や伝統から当たり前に行われている国や地域があることに、あらためて衝撃を覚えます。メガホンをとったのは、トルコ出身のデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督。自由を求める美しい5人姉妹の葛藤を女性監督らしい繊細な描写で映し出し、本作が長編デビュー作品ながら2015年カンヌ国際映画祭や第88回アカデミー賞をはじめとする、名だたる映画祭で注目を浴びました。5人姉妹を演じた少女たちも、三女役のエリット・イシジャン以外は演技初挑戦というから驚くばかり。姉妹でいる時の会話や雰囲気は演技とは思えないほど自然で、恋愛話に夢中になり、他愛もないおしゃべりやじゃれ合いに興じる姿は、どこの国でも共通なのだなと思うほど“女子そのもの”。彼女たちの才能とエルギュヴェン監督の演出の妙を感じさせます。女性監督で5人姉妹の物語と聞くと、ソフィア・コッポラ監督の『バージン・スーサイズ』(99)を思い出しますが、少女たちのつかみどころのない感情や、毒っぽさは本作にも共通しており、ガーリームービーの系譜を継ぐ作品ともいえます。また、力強さと希望に溢れたラストは、ブレイク前のジェニファー・ローレンスとクロエ・グレース・モレッツらが姉妹役を演じた、ロリ・ペティ監督の『早熟のアイオワ』(08)にも通じるところがあり、未見の方は本作と併せてDVDなどで観るのもおもしろいと思います。 |
付き合いはじめのデートで観るにはやや重いテーマかもしれませんが、映画好きのカップルならば、映像や音楽の美しさなど細部にも注目して鑑賞できると思います。好きな人と自由に恋愛をして、堂々とデートができるのはとても幸せなことだと思える作品です。映画館を出たあとは、その幸せを2人でかみしめましょう。 |
キッズにはまだピンとこないかもしれませんが、5人姉妹と同年代のティーンには、驚くべき内容だと思います。強制的に結婚をさせられることや、自由に恋愛ができないということは、日本ではあまり考えられないことですよね。しかし、世界にはまだまだこうした慣習や性的な差別に苦しんでいる人々がいます。そうした事実に目を向けるきっかけになるかもしれませんし、こうした問題を周りの人と話し合っていくことで、世界も少しずつ変わっていくのではないかと思います。 |
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2016.6.22 TEXT by min