2012年第62回ベルリン国際映画祭金熊賞〈グランプリ〉、2013年第85回アメリカ・アカデミー賞外国語映画賞 イタリア代表という快挙をなした本作。実際の刑務所で行われた公演本番が成功し、盛り上がる会場風景から本作は始まり、6ヶ月前の稽古スタート時からの様子はモノクロで描かれたドキュメンタリーです。獄中のあちこちで囚人たちは稽古を行っているのですが、観ている側がだんだん現実と演劇の稽古の境界線がわからなくなるほど、彼らは役になりきっていきます。そして、演じることを通して自分の罪や人生について考察し、一つのセリフがきっかけで過去への思いにふけったり、実際の獄中の人間関係に影響するに至ったり、とても興味深い現象が起こります。この稽古中の様子でさえ、だんだんとても映画的に見えてくるのですが、カメラを向けられているがゆえの反応というよりは、囚人たちは本当は役者が演じているのではないかと思えるほど俳優になりきって見えるし、囚人には見えなくなってきます。
ラストで一人の囚人が「芸術を知ってから、この監獄は牢獄になった」という言葉を残していますが、とても深いですね。もし、彼らが犯罪者になる前にこういう機会に触れていたら、違った人生を歩んでいたかも知れません(実際に演劇『ジュリアス・シーザー』のブルータスを演じた囚人は刑を早く終え、今は俳優だそうです)。芸術の力の偉大さと、どんなに素晴らしい演劇を披露しても、終わった直後に自分の牢屋に帰って行くというやるせなさを感じさせ、希望と絶望を同時に映し出していて、すごい映画でした。 |
デート向きかを考えるには少々特殊な映画ですので、好みの問題が先だと思います。内容的には、囚人が刑務所の中で演劇をやるというものですが、乱闘などもなく、怖い&痛いシーンはないので、落ち着いて観られます。日常を淡々と描いているのでそれほど起伏がないだけに、こういうドキュメンタリー映画を見慣れていない相手だと正直少々退屈だと思うかも知れません。でも、この映画に映し出されている内容はとても深いものです。なので、哲学的思想が好きなカップルは楽しめると思いますよ。 |