すごく良い映画を観たなあとしみじみ鑑賞に浸りました。邦題の雰囲気からして、ほのぼのした映画なのかと思いきや、結構熱い映画で、同時にとても切なく、爽やかでもあるんですよね。
年を取るといつの間にやら周囲の心配から過保護にされて、「あれをしたらダメ、これをしたらダメ」と言われる毎日。何か抵抗したら「精神的に問題があるんじゃないか」「ボケたんじゃないか」と言われたり、自分で自分のコントロールすらさせてもらえない状況が描かれ、心が痛くなるのですが、本作では、老人の苦悩だけではなくて、心が疲れている若者についての描写もうまいんですよね。その対比によって、何を持って「不健康」というのかが痛切に語られていて、老人達の姿に自分の未来を観るというだけでなく、そこに描かれる若者達の姿にも今の自分を投影して観てしまう部分があり、いろいろな感情が引き出されます。「年を取っても限界は自分自身が決めることだ」という未来への希望を与えてくれると同時に、「今を一生懸命生きているか?」と疑問を投げかけてくる本作。そういうメッセージがビシビシ伝わってきて、本当に胸が熱くなり、何度も涙がじわじわと浮かんできました。成し遂げたらどうなるか、成し遂げられなかったらどうなるかなんて関係ない、今やれるだけのことをやってみること、そしてそれをやれることが幸せなんだと改めて感じさせられました。年齢層問わず、多くの方に観て欲しい秀作です。
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主人公のパウルと、妻のマーゴの夫婦愛がとても素敵なので、ぜひ真剣交際をしているカップルに観て欲しいです。昔は国を代表するマラソン選手だったパウルが、年老いてから復帰すると話した際のマーゴの反応は至って一般的で共感できるし、綺麗事で語られていないのが本作の良いところ。それでもやっぱり夫を思ってトレーナーとして立ち上がる彼女の姿に夫婦愛を感じるし、パウルも妻への愛から走ろうとしていて、2人の強い絆に学ぶところが多くあります。これは老後の話として観るのではなく、一生添い遂げようとするどんな世代のカップルにもオススメです。 |
大人が観る視点や感覚とは違うかも知れませんが、キッズやティーンでも何かしら心にくるものがあるストーリーなので、ぜひ観てください。もし、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に観られる環境にいたら、誘ってあげると良いでしょう。鑑賞後にお互いに思いを話すと、自分たちだけではわからなかったことがより理解でき、感動も深まると思います。今の皆さんの年齢で当たり前にできることは、いずれ当たり前にできなくなります。そんなことを少しでも感じられれば、毎日をいつもより大切に過ごせると思います。 |