東ベルリンから来た女

全体の雰囲気がゆったりとしていて、主人公バルバラの日常に溶け込んだ気分で観ました。ベルリンの壁崩壊の9年前の東ベルリンが舞台で、女性医師のバルバラが街から田舎へ左遷されてしまうところから物語が始まります。ドイツの歴史に詳しい方であれば当時の状況を理解した上で、東西どちらの話をしているのか判断しやすいと思いますが、あまり歴史を把握していなかったので状況を理解するのに少し時間が必要でした。といっても、物語そのものは時代に翻弄され脅かされる1人の女性の心境を描いているので背景がわからなくても話自体は理解できます。むしろ観終わってから頭のなかを整理してあれこれ考えているといろいろ想像できたので、それもまたこの映画を楽しむポイントの1つだと思います。
主人公のバルバラのように、恋人と生きるのか仕事を全うして生きていくのかいう悩みは現代の女性も抱えている問題だと思います。ですが彼女の場合はこの時代のせいでつねに選択を迫られる状況にあり、両方選べないのが辛いですね。後半に差し掛かるとそれまで穏やかだった雰囲気が一転して急展開するので目が離せなくなります。バルバラの持つプライドや生き方は女性としてすごく尊敬しました。「もしこれが自分なら」と女性であれば誰もが自分と置き換えて観てしまうでしょう。バルバラの生き様から学ぶことがたくさんあり、自分のことを見つめる良い機会を与えてくれる映画です。ぜひ女同士や恋人といろいろ考えながら観て下さい。