2012年1月14日より全国公開/PG-12
ギャガ
公式サイト 予告編
2002年より週刊ヤングマガジンに連載され人気のコミック『ヒミズ』を原作に、2011年3月11日に起こった震災後の日本に設定を書き換えて映画化された本作。震災から1年を経たずに本作が公開されると思うと、内容的にもすごいチャレンジだなと思いました。園子温監督はこのことにリスクを感じながらも、「震災後に何事もなかったように映画を撮り続けることはできない」と、確固たる意志で映画のなかに取り込んだようですね。 主人公の住田祐一は「普通の大人になること」を願う15歳の少年。簡単に叶いそうな彼の願いが叶うのはかなり難しいという皮肉な展開に、「生きる意味」を考えさせられました。「自ら招いた不幸ではない」というところで、被災地が舞台になっている点が、この主人公の人生の厳しさを際立たせていました。「お前のこと、本当にいらないんだよ」と父親に言われてきた住田が、震災で生き残ったあとに母にも捨てられ、何を生きる糧にして生きていくのか…。これほどまでに生きる意味を他者に否定されたら、どれだけ前向きな人間でも生きていけないし、彼の「普通の大人になる」というささやかな思いさえも叶えてくれない人生は絶望的でしかありません。主人公の境遇と同じまではいかないにしても、普通の幸せを手に入れるのも難しい時代になってきたのかなというのは感じました。観ている方もどん底な気分になりますが、それでも「なぜ今生きているのか」を主人公の姿を通して、自分についても考えるきっかけになりました。あり得ない設定というか極端過ぎる設定も多々出てきますが、現代社会が異常事態という意味合いで考えるとそれほど違和感は感じません。また、主人公の2人の演技にも鬼気迫るものがあり、海外の映画祭でも評価されているのはうなずけます。15歳の視点を体験することで、大人がもっと頑張らなきゃとも思いました。 |
お気楽なデートで観る内容ではありません。かなりどん底にいる主人公がもっともっと堕ちていって、それでも「生きる意味」を見つけようとする物語なので、集中できるテンションで観て欲しい映画です。観終わったらすぐに気分を切り替えて…という感じでもないので、この映画を観たいと2人とも思って観に行くデートなら良いと思います。終わった後に話したくなることも多々あると思うので、ちゃんとした会話、真面目な会話ができない相手とのデートではオススメしません。 |
©「ヒミズ」フィルムパートナーズ
2011.12.29 TEXT by Myson