捉え方によっては結構残酷なお話にも、前向きなお話にも取れるストーリーです。物語は、北海道のとあるキャンプ場の奥地から白骨化した身元不明の死体が発見されてその近くに亡くなったばかりと思われる犬の骨があった…というところからいきなりスタートします。飼い主と思われる中年男性が亡くなってから推測で半年は経っているのに、そのあいだ犬はご主人の亡骸に付き添っていたことになる…それだけでちょっとうるっときてしまいますが、この飼い主の男性が誰なのか、そしてこんなところでなぜ亡くなったかを、玉山鉄二が演じる市役所職員の奥津京介が探るロードムービーです。奥津自身も昔悲しい過去を持っていて、この身元不明の“おじさん”の辿った道を旅するうちに心に変化が現れます。 前半は心穏やかに見られるのですが、後半の展開でなぜ“おじさん”と犬が旅をし、あげくの果てに亡くなったのかがだんだん判明してきて本当に切なくなります。今の時代の社会問題をいろんな意味でとても象徴しているので、途中からは娯楽として観ている感覚がなくなっていきました。それに、根本的に「人に優しい人ほど人には頼るのが下手」という不器用な人の一面を描いている点がとても印象深かったです。中盤で汚れた服で食べ物もろくに食べていない様子の少年が出てくるシーンで“おじさん”が少年について語る言葉が、ラストでそっくりそのまま“おじさん”にも言いたくなるという皮肉な展開…。その辺りも本当に切ないなと思い、私はどちらかというと全体的に悲しい物語だと感じましたが、ラストあたりの奥津のセリフでは前向きなことを語っていたのが意外でした。受け取り用によってはどちらにも取れる内容だと思いますが、結局のところ「その人にとっての幸せって何だろう」と考えさせられた作品でした。 あと犬たちの名演にかなりびっくりです。犬って訓練したらこんな演技もできるんだ〜と感心。犬の癒し系映画というのではないですが、やっぱり犬好きにとってはたまらない映画です。 |
「かわいい動物映画だ」なんて気持ちで観に行ったら、ちょっと面食らう物語なので、デートに行く前にちょっとだけ映画の内容を知った上で行くべきか決めた方が良いでしょう。結構重い内容なので真面目に観るテンションのときに行くと良いと思います。デート・ムービーというわけではないけれど、真面目な話をちゃんと会話できる相手なら鑑賞後にお互いの人生観など中身のある会話ができてちょっと距離が縮まるか、逆に離れるか…ですかね。 |
©2011「星守る犬」製作委員会
2011.4.24 TEXT by Myson