2015年11月14日より全国公開
熱帯美術館
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ケヴィン・クライン、マギー・スミス、クリスティン・スコット・トーマスという名優3人がメイン・キャストと聞けば、観たくなるのは当然ですよね。しかも、個人的に不動産に関心があるので、この物語の設定もとても興味深く観ました。“ヴィアジェ=Viager”というフランス特有の不動産売買システムがストーリーに絡んでくるのですが、これは資料によると「フランスには所有する不動産を相続する人がいない場合、ヴィアジェと呼ばれる独特の売買システムが200年以上前から存在する。70歳以上の身寄りのない老人に多く利用される売却方法で、ヴィアジェは“終身”という意味。特徴は、不動産を売却しても、売主が亡くなるまで住み続けることができること。売主が亡くなれば、家は買主に引き渡される」とあります。本当はもっと条件等があるのですが、それは映画で観て頂くとして、本作はこのヴィアジェという売買で出会った3人の物語です。最初はこの取引、どうなるんだろうという目線で楽しんでいたのですが、後半は全く様相が変わります。遺産したものは家だけではなく、おばあちゃんも…というのは想像の通りですが、もちろんそんなに単純な物語で終わりません。意外な真実が明かされていくのですが、真相そのものが重要なのではなく、真相をそれぞれがどう受け止めていたか、受け止めるかに焦点が当たっている点もおもしろいです。どんだけグッチャグチャなの〜と、予想外のドタバタな展開も楽しみつつ、愛のために人が何を守ろうとするのか、遺そうとするのかにも注目して観てください。 |
不動産売買についての説明がちらっとありますが、そういうくだりだけで難しい映画だと拒絶反応を示しそうなタイプの人は誘わない方が良いでしょう。実際にはそこはそれほど理解できなくても、物語にはついていけるので、頭が固くない人なら一緒に観ても良いと思います。でも、ちょっとビターな内容なので、ムードを盛り上げたいときには向いていないでしょう。「今日はじっくり映画を観るぞ」という日に、2人とも興味があれば観ても良いと思います。 |
ストーリーの大枠はティーンなら理解できそうだし、観て問題があるような内容ではないですが、不動産売買についてはキッズやティーンの皆さんにはまだピンとこないと思います。そこはあまり気にせずに観るならば、ややシュールではありますが、子どもの頃から心に問題を抱えたまま成長してしまった大人の姿は、今の皆さんにとって、参考になる部分もあるかも知れません。他者が思っている、見ているのと違って、人はそれぞれに悩みを抱えて生きています。子どもの頃に観ている風景は、別の人からすれば別の真実として記憶されることもあります。そういった状況を少しシミュレーションできると思います。 |
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2015.11.9 TEXT by Myson