2016年12月23日より全国順次公開/PG-12
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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たとえジャズに興味が無い人でも、マイルス・デイヴィスという名前ならきっと聞いたことがあるでしょう。ジャズ・トランペッターとして絶対的な才能と人気をもち、ジャンルや既成概念を打ち破る革新的なスタイルを追い求めて、常に時代をリードし続けたマイルス。誰もが認める音楽界の偉人でありながら、1991年に65才で亡くなって以降、なぜか彼を題材にした長編映画は作られませんでした。おそらく、あまりに伝説が多くて、どこをどう切り取っていいものか、誰もが迷ってしまったのかも知れません。そんなマイルスの長編映画を、『ホテル・ルワンダ』や“アベンジャーズ”シリーズでおなじみの俳優、ドン・チードルが製作していると聞いたとき、やはり脳裏をよぎったのは、「どの時代の、どんなマイルスの姿を描いたのだろう?」という疑問でした。そして、いざ完成した映画を観て驚いたのは、物語の核をなすエピソード自体はフィクションであるということ。1975年からの5年間、病気療養を理由に創作活動を休止していたマイルスですが、本作はそんな彼の自宅から幻の録音テープが盗まれるという虚構のサスペンス・ストーリーをベースに、マイルスの過去と現在、元妻のフランシス・テイラーへの未練や人知れぬ苦悩といった、彼の核心とも呼べる姿を浮かび上がらせます。この、“虚のなかに実を描く”というアプローチがとてもユニークで、大変興味を惹かれました。マイルスを追い回し、一緒に事件に巻き込まれていくローリング・ストーン誌の記者デイヴを演じるのはユアン・マクレガー。このデイヴとマイルスのチグハグなコンビ感も最高で、バディものが好きな方にもオススメできる作品です。監督、脚本、製作をこなし、さらにマイルスを演じたドン・チードルは、眼光の鋭さこそ本物には及びませんでしたが、仕草や、声、話し方は本当にそっくりでした。マイルスファンなら、エンディングロールの夢のようなセッションは絶対に見逃せませんよ! |
音楽に興味がない人も劇映画として十分に楽しめる作品ですので、デートで観るのもオススメです。ただ、思ったよりセッション・シーンやほかのジャズ・ミュージシャンとの関わりを描いたシーンが少ないので、音楽ファンは逆に物足りなさを感じるかも知れません。音楽的な部分よりも、ストーリーや登場人物達のキャラクターを楽しむ作品と思って鑑賞すると丁度良いと思います。 |
この時代のスターの人生には、どうしても過剰なセックスとドラッグが付いてきてしまうようです(現代でも、大物ミュージシャンの薬物問題が世間を賑わせてはいますが)。本作も、PG-12指定の作品ですので、子ども向きの作品ではありません。ただ、物語のストーリー自体は難しいものではないので、高校生くらいになれば十分に楽しめる作品だと思います。 |
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2016.12.5 TEXT by min