ヨーヨー・マと旅するシルクロード

タイトルからして、優雅な音楽とともに、美しい風景を辿るドキュメンタリーなのかなと思いきや、文化や音楽の背景にある社会問題に目を向けた内容でした。世界的チェリストであるヨーヨー・マが、国境を越えた様々な国の出身者からなる音楽団を結成。でも、異文化を融合させることに周囲からは反発の声があがったり、9.11のテロの後では、敵対する国からの出身者もいたり、周囲の理解を得る上で困難があったと言います。音楽は癒しの存在であり、社会問題から無縁なところにあるのかと思っていましたが、社会にとても密接したものだと痛感しました。また、思想による紛争が激しい中東では、文化人は危険視されており、演奏することもままならないという事実もショッキングでした。音楽を仕事にする困難や、文化や伝統を受け継ぐことの難しさも描かれていて、一方で、だからこそ異文化を知り、新しい事にチャレンジすることで、自身の文化をより知ることになり、受け継ぐことができるのだという考え方にとても共感できました。ヨーヨー・マや仲間の音楽家達は、それぞれに使命感を持って音楽活動をしているのだと知りましたが、自分達が持てる音楽の力で社会を変えようとしている彼らは、本当にすごいなと思います。