2016年10月29日より全国公開
クロックワークス
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余命宣告を受け、家族のために奮闘する母と周囲の人々の触れ合いを描いた作品です。“死”に向き合う切なさと痛みを内包しつつも、それを上回る温かな愛情がスクリーンから溢れ出てくるようで、鑑賞中は何度も胸が熱くなって涙がこみ上げました。オリジナル脚本でメガホンを執ったのは、家族をテーマに作品を作り続ける中野量太監督。2012年に自主制作映画『チチを撮りに』が国内外の映画祭で注目を浴びた同監督の商業デビュー作ということで、個人的に心待ちにしていた作品ですが、脚本も俳優陣の熱演も素晴らしかったです。主人公の“お母ちゃん”こと双葉を演じるのは、宮沢りえ。ちょっぴり気の弱い娘の安澄を演じるのは若手実力派の杉咲花。持ち前の明るさで苦難に立ち向かう強くて優しい母親と、母の体当たりの愛情に呼応し、たくましく成長していく娘。思いやりとは目に見えないものですが、2人の繊細な演技表現からは、その絆がはっきりと見てとれるようでした。どこか憎めないダメ夫を演じたオダギリジョー、双葉の愛情に巻き込まれていく青年を演じた駿河太郎と松坂桃李ら、男性陣のキャラクターも魅力的で、エンディングまでぐいぐいと引き込まれる良作です。 |
主人公の家族は銭湯を営んでいますが、ある日、夫が家出をして休業状態に。家族を放り出してフラっと出ていってしまう無責任な夫と、それに振り回される家族の話でもあるので、同じような問題を抱えているご夫婦やカップルは別々に鑑賞したほうが映画に集中できそうです(笑)。とはいえ、物語は次第に家族の愛情や絆を深める方向に動きますので、最後まで一緒に観ればお互いの中にある愛情を確認する機会になるのではないでしょうか。 |
親子の愛だけでなく、血のつながりを越えた人間同士の愛を描く本作。小さいお子さんには、まだ理解できない部分もあると思いますが、小学校の高学年くらいになれば心に響くものが必ずあると思います。気の弱い安澄が勇気を出してイジメに立ち向かうシーンはかなり大胆ですが、同じような悩みを抱えている子には勇気を与えてくれるかも知れません。 |
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©2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
2016.10.11 TEXT by min