2015年2月14日より全国公開
『ラブストーリーズ コナーの涙』『ラブストーリーズ エリナーの愛情』二部作
ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト
本作は、一つの物語を男性の視点、女性の視点のそれぞれ1作として描いた異色作。どちらか1作だけ観ても物語自体は一応完結しますが、作品としては2作とも観てこそ完成します。主人公はあるコナーとエリナーのカップル。『ラブストーリーズ コナーの涙』はコナーを主人公に男目線で描かれた物語。私はこちらから先に観ましたが、どちらを先に観るかでだいぶ印象が変わる気がします。男性目線の方から先に観ると、2人に何が起こったのか途中まで知らずに物語を追っているのでエリナーがとても冷たい女性に思えます。ただもう一方は『ラブストーリーズ エリナーの愛情』というタイトルなので、何か裏があるんだろうというのは憶測しながら観てしまうのですが、視点が変わることで物語への印象がどれだけ変わるものなのか、つまり、日頃私たちが目にしている身の回りの出来事も、どういう視点で見るかによってどれだけ解釈や印象が変わるかというのを実感するのに、本作の構成はとても有効だと思います。原題は“ THE DISAPPEARANCE OF ELEANOR RIGBY:HIM and HER”なので、個人的な好みで言うと、邦題もサブタイトル部分は「彼の場合」「彼女の場合」くらいのほうが、余計な憶測なしに観られたかなという気はしますが、日本ではエモーショナルな雰囲気を漂わせている方が観る人も多そうなので、宣伝的にはこの邦題の方が良いのかも知れませんね。 男女の愛情の示し方の違いと、父性と母性、そして苦難を乗り越える際のスタンスの違いを描いた本作。3点目に関しては完全に男女差というのでは分けられない個人差という部分も多いとは思いますが、父性と母性の違いが大きく影響しているように思います。一緒に人生を送ろうとする2人の人間に予想もしなかった大きな困難が起きたとき、まさしくこういう価値観の違いが運命を分けるのだなということがよくわかります。“ラブストーリーズ”と言えども、これは大きな意味合いでの“愛”の物語として観てください。 |
タイトルやポスターのビジュアルからはとてもロマンチックなムードを期待してしまいますが、意外と生々しい男女間の苦悩が描かれているので、良い雰囲気になりたいときに観るには不向きでしょう。ただ、男性目線、女性目線をお互いに理解するという目的を果たすには、2人で一緒に両方観て、鑑賞後に語り合うと有意義だと思います。また、もし自分たちがこういう苦難に陥ったらどうするか意見交換すれば、お互いの価値観もわかるでしょう。1点だけ、子どもの話題が出てくるので、そういう話題にナーバスになっているカップルや夫婦は今観るのはヘビーかも知れません。 |
キッズには、感情的な部分でまだ理解が難しいストーリーです。ティーンもまだピンとこない部分はあると思いますが、男女の考え方の違いについて考える参考にするのは良いと思います。また男女にもう一つの要素が加わったときに、男女関係はさらに複雑になり、お互いを好きか嫌いかという概念だけでは進めないということも客観視できる内容です。今はまだ遠い未来の話のように思えるかも知れませんが、他者の感情を理解するシミュレーションとして観るのも良いでしょう。同時に、視点が変わることで物事の見え方がガラリと変わるということも観察してみてください。 |
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2015.2.3 TEXT by Myson