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『ロブスター』 2016年3月5日より全国順次公開 ©2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation. |
『ロブスター』 |
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本作で描かれる近未来では、独身者は45日間ホテルで身柄を拘束され、その間にパートナーを見つけないと、動物に変えられてしまいます。今まで結婚していても離婚や死別したら、また同じように拘束されパートナーを見つけるというルールのようで、主人公はバツイチながら、ホテルに連れられ、パートナー探しを再開します。一方で、それに反発して、シングルを徹する集団が森に潜んでいるのですが、こちらもこちらで恋愛禁止。2択しかない世の中になったら、人間はどうなってしまうのでしょうか? |
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現代の日本でも、お年頃になれば、結婚するのかしないのかを話題にされますが、正直なところ、結婚するもしないも決断するタイミングは人それぞれ。ずっと結婚するつもりがなかった人でも、50代以上になって結婚する人だっているし、結婚したいと思っていてもなかなか相手が見つからない人もいれば、若くして結婚して別れてしまう人もいます。それを、無理矢理「今、結婚するかしないか決めろ」と言われても、無理な話。しかも期限内にパートナーが見つからなければ、動物に変えられてしまうという信じられない扱い。映画の世界では本当に動物に変えられてしまうという設定ですが、このたとえをリアルな世界の解釈に置きかえれば、大人になっても結婚できなければ人間ではないという極端な価値観が浮かび上がってきます。一方で、森に潜む集団は「1人でいること」に固執していて、仲間同士での友情は認めますが、恋愛は認めていません。これも極端ですよね。恋愛=結婚というのもおかしいですが、結婚しない=恋愛しないというのもおかしい。結婚しなくても恋愛はするし、恋愛しても結婚しないこともある、それが人間です。本作は、そういった“人間らしさ”を奪われた近未来を皮肉な形で描いている点で大変興味深いです。逆説的に恋愛って素晴らしいということなのかも知れません。 |
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TEXT by Myson