心理学

心理学から観る映画18:“無意識”は人間の心の健康にどう関わってる?

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映画『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』ジーモン・モルツェ

精神科医ジークムント・フロイトは“無意識”という概念を生み出し、今私達の生活の中でも当たり前に“無意識”という言葉は使われています。でも、“無意識”って一体何なのでしょうか?ということで、今回はフロイトの理論をごくごく簡単にご紹介します。

意識・無意識の領域では何が起こってる?

私達は日常のなかで、「無意識に人の名前を言い間違えた」とか、「無意識に駅に向かっていた」といった体験をします。フロイトが唱えた精神分析理論では、意識的な力と同様かそれ以上に、無意識的な力が私達の行動を決定していると考えます(下山ほか 2009)。フロイトが提唱した人間の意識について、下記に図で示します。

ジークムント・フロイトの精神分析理論“意識・前意識・無意識”の図

渡辺ほか(2009)によると、「フロイトによって提唱された精神分析学は、心理学の領域から生まれたものではなく、神経症などの精神的疾病の治療技法から作り出された心理学的理論である」とされています。フロイトは、ヒステリー研究や強迫神経症の研究から、精神分析の基本的な理論を示しましたが(下山ほか 2009)、無意識について理解する上で、心的構造論も大切になってきます。

心的構造論
■エス(イド):本来無意識に留まり、生物学的に規定され、本能欲動的で論理性を欠き快楽原則のみに従う。たくさんの最も古くて最も力強い衝動が存在する幻想の中核であり、それは依存、性的なもの、殺人、野心、競争心を含む。
■自我:現実検討力や時間感覚、思考過程を司る。イドの緒力と超自我と外界の現実の間を媒介する適応のための機関であり、3つの力を平衡状態に保とうとする。無意識と意識として存在。
■超自我:意識と無意識に存在しており、両親からのしつけが内在されて形成された心の検閲機関である。自我を監視し、道徳心、罪悪感、自我理想の機能を持つ。

下山ほか(2009)

ざっくりと言い換えると、人間が社会で生きていく上で、欲望や快楽のままに生きると問題が生じてしまいますが、超自我の道徳感や罪悪感によって制御が働きます。そのエスと超自我のバランスをとっているのが自我であるということです。
精神分析では、エス(イド)、自我、超自我の三者が相互に関連し合い、有機的に変動すると考え、その動きを理解することが重要だとされています(丹野ほか 2015)。そして、この三者の均衡を維持するために、自我が不適切な防衛機制を働かせてしまうと、心身の失調に至ると考えられています(下山ほか 2017)。

フロイトが概念化した無意識は目に見えないもので、それを探るために、自由連想法や夢分析が生まれました。人間を理解しようとする上で、自我を探ることは必須ですが、自分自身も気付いていない無意識という概念を扱っていることで、フロイトの精神分析学は興味をそそりますね。

<参考・引用文献>
下山晴彦ほか(2009)「やわらかアカデミズム・<わかる>シリーズ よくわかる臨床心理学[改定新版]」ミネルヴァ書房
渡辺浪二・角山剛・三星宗雄・小西啓史(2009)「心理学入門」おうふう
丹野義彦・石垣琢磨・毛利伊吹・佐々木淳・杉山明子(2015)「臨床心理学」有斐閣

映画『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』ジーモン・モルツェ/ブルーノ・ガンツ

『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』
2020年7月17日より全国公開

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

フロイトは、主人公のフランツに夢を見たらそれを記録するようにと言いますが、無意識に何があるのかを探る手がかりとして、夢を情報源としていたことがわかります。

©2018-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-MARS FILMS–France 2 CINÉMA–PLAYTIMEPRODUCTION-SCOPE

映画『危険なメソッド』マイケル・ファスベンダー/ヴィゴ・モーテンセン

『危険なメソッド』
Amazonプライムビデオにて配信中(レンタル、セルもあり)
ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

特にユングとフロイトの会話が見どころ。これが一般人の会話だったら、とんでもない内容で滑稽に聞こえるのですが、学術的な会話になると意味することがガラリと変わります。フロイトの理論が当時批判されていた背景なども語られています。

危険なメソッド(字幕版)

©2011 Lago Film GmbH Talking Cure Productions Limited RPC Danger Ltd Elbe Film GmbH. All Rights Reserved.

『エージェント・オブ・シールド シーズン6』
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REVIEW

離ればなれになっていたフィッツとシモンズがようやく出会えたものの、また困難な状況に置かれます。あるシーンでは2人の“イド”の部分がキャラクターとして登場します。イドが何であるかがとても象徴されたシーンとなっています。

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女性警視ステラは自分の夢を日記に付けています。犯人との心理戦が繰り広げられる中で、ステラの心理も肝になってくる点にぜひご注目ください。

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TEXT by Myson(武内三穂・認定心理士)

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