前記事で、商業映画とSEL(社会性と情動の学習)は相性がバッチリだと書きました。ただし、向き不向きはあり、観る側の捉え方の問題もあるので、独学できる段階まではガイドが必要だと考えています。どのようにガイドするのかは、別の機会に述べるとして、今回はこれぞ学べる映画と感じた作品を取り上げます。
SEL(社会性と情動の学習)の定義とSELで向上を目指す8つの社会的能力についてはこちら
それは、『ワンダー 君は太陽』(2018)です。この作品はエンタテインメントとして優れているのはもちろん、多くを学べる作品として群を抜いていると感じます。SELの教材として考えても、ピッタリの作品です。

『ワンダー 君は太陽』の主人公は、生まれてから何度も顔の手術を受けてきた少年オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)です。オギーはずっと自宅学習をしてきましたが、小学校5年生から学校に通うことにします。でも、オギーはクラスメイトになかなか馴染めません。それでもオギーは明るく強く振る舞い、徐々に周囲に変化をもたらしていきます。
この物語は登場する子ども達の感情の動きがありありと伝わってくるので、観ている側の感情も大きく揺さぶられます。そして、オギーは家族という小さな社会から、クラス、学校というもう少し大きな社会に歩み出て、人間関係を築いていく点で、まさに社会性を学ぶ内容といえます。
SELの基礎的社会的能力に照らし合わせてみると、まず感情が揺さぶられる、つまり自分の感情に目が向きやすくなるので、自己への気づきに繋がります。さらにオギーの視点だけではなく、オギーのクラスメイトの葛藤も描かれている点で、他者への気づきを得られます。

また、本当は寂しさや怒りをぶつけたい場面で感情を抑える姿なども映り、自己のコントロールが行われている様子を観ることができます。そして、対人関係におけるさまざまな山場を迎える点で良いお手本、悪いお手本となるシーンが豊富です。
辛い状況でも自分や他者について理解し、自分らしく振る舞うオギーの姿は、責任ある意思決定による姿勢と捉えることができます。
このように、『ワンダー 君は太陽』はSELで向上を目指す、5つの基礎的社会的能力とは何かをつかむ上で有用なシーンが詰まっています。一度目は、純粋に作品として味わっていただきつつ、上記のようなSELの視点でも観てみてください。

『ワンダー 君は太陽』
監督・脚本:スティーヴン・チョボスキー
出演:ジュリア・ロバーツ/オーウェン・ウィルソン/ジェイコブ・トレンブレイ/イザベラ・ヴィドヴィッチ/ダヴィード・ディグス/マンディ・パティンキン/ダニエル・ローズ・ラッセル/ナジ・ジーター/ノア・ジュプ/ブライス・カイザー
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 スティーヴン・チョボスキー監督インタビュー
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TEXT by 武内三穂(認定心理士)