WOWOWプライムで4月2日に放送、犬猫の殺処分に直面する行政獣医達の葛藤と再生を描いた『この街の命に』に出演する加瀬亮さんと篠原篤さんにインタビューさせて頂きました。犬猫の殺処分というデリケートなテーマを扱う本作ですが、お二人に出演前と後の心境の変化や、本作に出演して得たものについて伺いました。ドラマのお話のときはとても真剣な表情のお二人でしたが、それ以外のところではお二人とも仲良く笑顔でトークする場面もあり、とても和やかな雰囲気のインタビューでした。
PROFILE
加瀬亮
1974年11月9日、神奈川県生まれ。2000年に石井聰互監督の『五条霊戦記』でスクリーンデビュー。2008年には周防正行監督の『それでもボクはやってない』で、第31回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、第50回ブルーリボン賞、第32回報知映画賞など、数多くの賞を受賞。国際的にも活躍しており、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』、ガス・ヴァン・サント監督の『永遠の僕たち』などに出演。2016年アメリカ公開予定のマーティン・スコセッシ監督作“Silence(原題)”にも出演。『ドラマW この街の命に』では、主人公の行政獣医、牧田役を演じる。
加瀬亮さん写真:ヘアメイク、細川昌子(ベレッツア スタジオ)/スタイリスト梶雄太
篠原篤
1983年2月1日、福岡県生まれ。2013年に橋口亮輔監督の『ゼンタイ』に出演。2015年に同監督作『恋人たち』で主演し、第39回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『ドラマW この街の命に』では、動物愛護センターの作業班、木崎役を演じる。
シャミ:
今回の作品は犬や猫の殺処分や行政獣医の方々の心情が描かれた作品でしたが、それぞれご自身のなかで出演する前と後で何か変わったことはありますか?
篠原篤さん:
僕はこのドラマが終わった後に、動物愛護についても考えたのですが、自分自身の命の使い方について考えました。僕は日頃から、この世に生まれて限られた時間のなかでこの命を何に使おうかと考えるのですが、このドラマの撮影が終わった後には、より考えるようになりました。そう考えたときにやはり仕事が今の自分の時間の大半を占めているわけで、日々自分の命と時間を削っているものなんです。だからただ働いてお金を稼ぐだけの仕事ではなく、世の中での自分の役割や仕事は何だろうと、今の仕事との向き合い方について深く考えました。
加瀬亮さん:
撮影していた施設で、職員の方に「行政獣医とはどんな仕事ですか?」と尋ねたときに、何とも言えない表情で「犬で例えると、片手で撫でて、片手で絞め殺している。そういう仕事です」と話すのを聞き、やはり矛盾した思いに引き裂かれそうになりながらこの仕事を続けているんだと感じました。犬や猫、またはペットのことを命だと思っている人もいれば、モノだと思っている人もいるんですよね。正直「これが正しいです」と言うことは、今の段階では言い切れませんが、そのなかで自分らが何を考えられるのかをいくつか示唆してくれるのがこの作品だと思っています。撮影を終えて変わったことは、普段街を歩いていて犬と猫がより目に入ってくるようになったことです。それから撮影時に犬の接し方などをたくさん教えて頂いたので、飼い主と犬との関係などもつい見てしまいます。
シャミ:
本作に出演して良かったことや何か得たことはありますか?
篠原篤さん:
この作品に出演して良かったのは加瀬さんと共演できたことですね!本人を目の前に言うのはとても恥ずかしいのですが(笑)、本当に尊敬するところばかりで、いつか加瀬さんのような役者になりたいと思いました。
加瀬亮さん:
僕も篠原くんと共演できて本当に良かったです。自分の場合、仕事とプライベートという切り替えがなく下手で、あまり区別がありません。今回の現場では、篠原くんに会えてもちろん良かったですし、さらに現場が終わっても続く関係になっていて、今もよく映画の感想をメールで送り合ったりしています。そういう意味では、作品は一つずつでも、そこで出会った人達との関係はずっと続くものなので、そのなかで特に仲良くなれる人と出会えることは、本当に幸せなことです。今回共演した田中裕子さんや戸田恵梨香さんとも以前にお仕事をしたことがありますが、この作品を通してまた新たな面を知ることができましたし、他の共演者ややスタッフの方々とも出会えたことが一番嬉しかったですね。
シャミ:
俳優というお仕事をしていて一番やり甲斐を感じるときはどんなときですか?
篠原篤さん:
僕は役者としての経験はまだまだですが、やり甲斐を感じるのは、僕の出演した作品が観た方にとって価値のあるものになることです。観終わったあとにすっきりしたり、仕事を頑張ろうと励みになったり、逆に眠れなくなるほど余韻に浸ったり、とにかく観た方に何かしら影響のある作品が良いと思います。僕自身そういった作品と出会って、時に助けになったこともあったので、僕の出演した作品を観たお客さんにも何か感じてもらえたら嬉しいです。
シャミ:
この作品も観終わった後にすごく余韻が残る作品だったので、きっとこれからご覧になる方の心にも何か残るものがありそうですよね。
篠原篤さん:
そうだと良いなと思います。
シャミ:
加瀬さんはいかがですか?
加瀬亮さん:
良い作品ができたらといつも思っています。若い頃はもっと自分のことしか見えていなくて、すごく狭い範囲で物事を見ていて、いろいろな先輩の役者さんや監督に注意をされても、あまり意味がわかっていなかったんです。でも続けているうちにだんだんと「あの時、こういうことを言ってくれていたんだ」とわかってきて、今は昔よりもすごく周りを頼って仕事をしています。今回の作品では主演として、たまたま作品の真ん中にいますが「主演だからこそ頑張ろう」とか思わなくなりました。若い頃だったら主演をプレッシャーに思ったかも知れませんが、今は皆で演技をして一つの作品を作っていると素直に思えるので、すごく周りに頼っています。
シャミ:
歳を重ねるごとに俳優として変化されているんですね。
加瀬亮さん:
そうですね、自然と変化していきますよね。どこに行き着くのかはまだわかりませんが、楽しいことを見て進んでいきたいですね。
2016年3月2日取材&TEXT by Shamy
2016年4月2日(土)夜9時よりWOWOWプライムにて放送
監督:緒方明
出演:加瀬亮/戸田恵梨香/田中裕子/渋川清彦/黒田大輔/岡山天音/諏訪太朗/篠原篤/柳英里紗/高橋長英/島かおり/きたろう/熊谷真実
動物愛護センターに行政獣医として配属された牧田洋は国の法律に従い、さまざまな理由で捨てられた犬や猫を殺処分する業務を遂行していた。牧田やほかの職員は“誰かがやらなければならない仕事”と自分に言い聞かせながら働いていたが、誰もが悩み苦しんでいた。そんなある日、センターに新所長がやって来て…。
★WOWOW関連特集『ドラマW この街の命に』放送記念!俳優 加瀬亮
『それでもボクはやってない』4月2日(土)13時〜
『劇場版 SPEC〜天〜』4月2日(土)15時30分〜
『劇場版 SPEC〜結〜 漸ノ篇』4月2日(土)17時35分〜
『劇場版 SPEC〜結〜 爻ノ篇』4月2日(土)19時15分〜