テレビドラマシリーズがSeason2まで放送され、今回が映画化第2弾となる侍×猫の癒し動物時代劇『猫侍 南の島へ行く』(9月5日公開)。その主演を務め、さらに脚本も手がけた北村一輝さんにインタビューさせて頂きました。「この映画は、素の自分にすごく近い作品かも知れません」と語る北村さんの映画製作への想いと本作の持つ独特のゆるさについてお話し頂きました。
PROFILE
1969年7月17日、大阪府生まれ。1990年デビューし、1999年に『皆月』『日本黒社会 LEY LINES』でキネマ旬報・日本映画新人男優賞など数々の賞を受賞。2014年に出演した主演作『猫侍』が、第8回JAPAN CUTS映画祭にてCut Above賞を獲得。古代ローマ人を演じた『テルマエ・ロマエ』シリーズから仲代達矢と父子役で渡り合った『日本の悲劇』まで多彩な役柄を演じ分ける実力派俳優。近年の出演作に、映画『寄生獣』2部作、TVドラマ『ホワイト・ラボ〜警視庁特別科学捜査班〜』『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』『ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜』などがある。10月9日よりBunkamuraシアターコクーン他にて、舞台「大逆走」で主演を務める。『猫侍 南の島へ行く』では、前作『猫侍』に引き続き主人公を演じ、さらに今回は原案と脚本も手掛けている。
シャミ:
テレビはSeason2、映画化は今回が第2弾となりますが、出演されていてこの作品の好きなところや気に入っているところはどんなところですか?
北村一輝さん:
この作品は、みんなで試行錯誤しながら話し合い作った、そのゆるさが一番良いなと感じています。決して全てが綺麗ごとばかりではありませんでしたが、迂余曲折を経て作り上げていった作品です。映画の前作では、久太郎と玉之丞(猫)の信頼関係や想い合っているようなシーンが少なく、テレビの方がおもしろくて良かったよねという話を耳にしていました。今回も、最初に脚本を読んだときに同じような違和感を覚え、僕が「久太郎と玉之丞が、アフリカや南の島とかいろいろな国に行ってしまう話はどうだろう?」と話したことから、脚本を書くことになりました。僕としては、猫との信頼関係や思いやりの部分を大切にしたかったので、まるで久太郎と玉之丞が恋人同士みたいに見えるように書きたいと考えていました。
シャミ:
あなごちゃん(玉之丞役の猫)と北村さんの相性が良いっていうのを資料で読んだのですが、北村さんがもともと猫好きだったり、何か演技する上で気遣った部分などはあったのでしょうか?
北村一輝さん:
猫はもともとすごく好きです。あなごは、常にじっとしていてすごく性格が大人しいですよ。女性の好みでもそうですが(笑)、僕自身騒がしいよりものんびりしていて何時間いても平気な人が良いですね。あなごは猫ですが、まさにそういう感じでしたね。それに僕が昔飼っていた猫に近いところもあり性格も合っていたので、ほかの猫が撮影に来てもあなごとは確実に差がありましたね。もちろんほかの猫も可愛いなと思いますが、あなごは特別に可愛いです(笑)。
シャミ:
北村さんご自身が原案と脚本を手がけ、さらに出演もされ、本作にはかなり携わっている部分が多いと思いますが、映画づくりという部分でこだわったところはどんなところですか?
北村一輝さん:
こだわったところというか、僕らは本当に一生懸命に作っていて、普通の映画だったら1回作ったらもう変えませんというところを、僕らはギリギリまでやり直して作りました。1のときは、一度完成して初号を観たあとに、もう一度編集し直して、追加でナレーションを入れたりしたこともありました。そうやって常に観てもらう人の立場に立ってちゃんと作るというところが僕たちのこだわりだと思っています。
シャミ:
なるほど〜。そういう部分は、映画のなかに親近感として伝わってきたように思います。それにゆるい笑いがちょこちょこ入っている感じも好きでした(笑)。
北村一輝さん:
本当にゆるいんですよ(笑)。「このくらいのゆるさで良いんじゃない?」と、敢えてちょっとしたミスをそのままにしているところもあります。その完璧ではないところが、逆に生の人間っぽさがあると思ったので、ちょっとまとまっていなくても、そのまま残しました。恋愛やセックスではないですが、映画も相手があって初めて成り立つもので、観る側のことをどれだけ考えられるかということが大事だと思っています。「僕たちはこんな映画を作りました」「こんな芝居をしました」と全部自分に返ってくることばかり考えるのではなく、とにかく1人でも多くの人が笑って喜んでくれることが正解だと思っています。
シャミ:
映画って公開に向けて宣伝されて盛り上がりますが、実際に公開されるとその時点で盛り上がりが終わってしまうような気がするのですが、そういった点についてはどう思いますか?
北村一輝さん:
それは感じますね。たぶん映画づくり自体が興行収入や利益のためになってしまっているから、そういう盛り上げ方になっているような気がします。でも今は映画以外にもたくさんの娯楽があって、映画そのものに興味がない人もたくさんいるわけですし、正直興行収入がどうとかそんなことを言っている場合じゃないですよね。まずは映画自体を楽しんでもらうところから始めないといけなくて、興行収入とかはその後の話だと思うので、とにかく今は皆さんの生活の一部に映画が浸透していくことを目指したいと思っています。
シャミ:
これからもこのシリーズを続けていきたいっていう気持ちはありますか?
北村一輝さん:
お客さん次第というところもありますが、“猫侍”の企画、コンセプトはおもしろいと思っていますので続けられるなら続けたいです。この作品はどんな人でも観られるし、思いやり、愛する気持ちや優しさ、そういう目に見えないものをちゃんと見せている作品だと思っています。相手が人間でも動物であっても、言葉なしで素直に想い合えたり、信じ合ったりするものだからそういう部分を感じてもらえたらと思います。それプラスゆるいところも楽しんで欲しいですね。
2015年8月17日取材&TEXT by Shamy
2015年9月5日より全国公開
監督:渡辺武
原案・脚本:北村一輝
脚本:永森裕二/黒木久勝/池谷雅夫
出演:北村一輝/LiLiCo/燻R善廣/木下ほうか/酒井敏也/緋田康人/木野花/横山めぐみ
配給:AMGエンタテインメント
斑目久太郎は、無双一刀流免許皆伝の腕前で、“まだら鬼”の異名を持つ剣豪だったが、江戸での仕官が叶わず、今は故郷の加賀藩で姑の恨み節を背中に浴びながら浪人生活を送っていた。そんなある日、姑が土佐藩の剣術指南役の話を持ちかけてくる。気乗りしない久太郎だったが、愛猫の玉之丞を連れて土佐藩へと旅立つことに。しかし、船着き場を目前にして謎の忍者に荷物を盗まれ…。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
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