今回は、甘党には衝撃的な映画『あまくない砂糖の話』公開を記念して、食にまつわる映画特集第二弾をお届けします。わかっちゃいるけど、やめられないという方は多いと思いますが、こういった映画を観ると、ちょっと自制心が働くかも。
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2016年3月19日より全国順次公開
監督・脚本:デイモン・ガモー
出演:デイモン・ガモー/スティーブン・フライ/イザベル・ルーカス/ヒュー・ジャックマン
配給:アンプラグド
© 2014 Madman Production Company Pty Ltd, Old Mates Productions Pty Ltd, Screen Australia ALL RIGHTS RESERVED
監督自らが被験者となって、糖分を過剰摂取し、身体にどういう変化が起こるのかを実証している本作。何より衝撃的なのは、私たちの周りの食物には糖分が多く使われていて、健康的だと思って口にしているものはもちろん、カロリーは標準値であっても、糖分過多の生活を送っている人がほとんどという事実。カロリーや脂質の摂取量と混同されないよう糖質に特化した実験をしているので、糖分がどんな影響を及ぼすのか、とてもリアルでわかりやすくて、観ていて本当に恐ろしくなります。私も甘い物が大好きですが、この映画を観ると控えなければという思いが強くなりました。
2016年3月1日、本作で監督・主演として、身をもって60日間砂糖生活を実体験したデイモン・ガモーさんが来日しました。この映画がいかに大きな反響を呼んだか、デイモン・ガモーさんのお話をご紹介します。
ちょうど1年前に母国のオーストラリアで公開されて、私の人生を変えてくれる映画になったんですが、15ヵ国で本が出版され、映画は35ヵ国で公開されています。非常に高い評価を得て、オーストラリアではドキュメンタリー映画でナンバー1の興行成績を残しています。この映画は公開後にさまざまな反響を呼び、映画界だけでなく、オーストラリアの学校でさまざまな食のプログラムを作ることができたり、先住民のアボリジニの方々に協力するワークショップなどのプログラムも組まれたり、食の情報を正しく伝えるためのアプリなども開発されています。さまざまなコミュニティに文化として情報をお伝えできただけでなく、イギリスやニュージーランドの行政では条例をきちんと発令していくということも起きています。
アメリカでも反響を呼んで、いろいろなTV番組でもお話をさせて頂きましたが、コカ・コーラを代表とする"シュガー連盟"の弁護士が毎回番組出演前にやってきて、先方から「砂糖の話をするときに糖尿病、肝臓病という言葉を一切使うな」という指示も受けたりしました。それは大変悲しいことだったんですが、残念ながらアメリカだけでなくどの国でもそうだと思いますが、フード業界はテレビ業界と関係があるので、正しい情報を公の場に出せないというのが現状です。
砂糖が良くないと言っているわけではなく、いろいろなものに隠されているときがあるということです。私自身もときにチョコレートを食べることもあります。でも、毎朝アップルジュースとヨーグルトと一緒にチョコレートも食べてますとなると、危険な摂取量に近づいていくということで、糖質は危険ということを本作では描いています。
(コミカルに構成されていることについて)制作中に事務所の壁には、「真実を聴衆に伝えるなら、笑わせないと殺されるぞ」というオスカー・ワイルドの名言を貼って、ずっと見ながら制作に取り組んでいましたが、この作品は子どもも含め、家族で観てもらいたいというのが第1にあったので、子どもが飽きないように、かつ大人にもアピールできるように、いわゆるエンターテイメントとしてコマーシャル性をどこまで広げられるかということに、非常に気を使いました。結果としてたくさんの観客、家族にも観て頂きましたが、そういうアプローチのなかで重要になったのが、色の使い方でした。実際に食品業界は、砂糖を売るときにカラフルな色を使いますが、それを逆手にとって、正しいメッセージを子ども達、両親に伝えていくことを常に意識して作りました。ヒュー・ジャックマンのサンド(砂)・アートのシーンは、オーストラリアのアーティストの知り合いに頼んで、別録りしました。それとあれは砂ではなく、砂糖でやっています。子どもに対するメッセージはとても大事で、我々が口にする食べ物は、ここまで感情や精神に影響を及ぼすということを、伝えていかなければならないと思います。
今まであまりにも食べ物に無防備過ぎたな、無関心過ぎたなと実感できる映画ばかり。相当細かく注意しても完全に避けることができないほどに食品には隠れた事実がまだまだありそうですが、まずは実態を知ることが大事ですね。
2016.2.24 TEXT by Myson