このコーナーでは仕事生活における女性にスポットをあてた映画を取り上げようと思います。キャリアアップしていく楽しいストーリーから、セクハラやいじめと闘う女性まで、職場にあるいろいろな場面を観て、現実の厳しさを勉強したり、励まされたり…。
日本もまだまだ男性社会。働く女性にはいろいろあります。
TOP > テーマは女:仕事TOP > HERE
あなたは自分が社会のなかでどのような位置づけかを考えたことはありますか?お金の稼ぎ方にもその構図に基づくカラクリがあります。今回は、不況のフランスを舞台に描かれた作品『フランス、幸せのメソッド』のセドリック・クラピッシュ監督のインタビューをご紹介しつつ、社会の構造について考えてみましょう。
ツイート
まず、映画監督のケン・ローチ。私自身は彼のように「コミュニスト」的で人種的なアプローチを同様に取ることはできないが、「社会問題にフォーカスする」という意味でそう言える。社会に対して好戦的な映画を作る気はないが、政治問題に挑戦してみたかったんだ。立場の取り方が難しいと知っていたんだが…。ケン・ローチの『エリックを探して』は、真のコメディ作品になっていて、彼にとって面白い展開だと思った。
だが、一番私が影響を受けたのはフェリーニの『カビリアの夜』。この作品のジュリエッタ・マシーナ演じる主人公は、初めは犠牲者だったが、ラストにはさらにひどい犠牲者になっていた。二度も騙されてしまったので、その敗北者の姿をジュリエッタはとても深く演じていた。そういう状況になっても、観客が最後に笑えるのが、凶暴でありながらも美しいと私は思ったよ。ここから(『My Piece of the Pie』の)映画の形式と構造を参考にした。
それから、フランク・キャプラの『一日だけ淑女』、『我が家の楽園』にも影響を受けた。キャプラの社会問題を取り上げるユニークな手法や、社会問題からコメディを作ることにね。
まず、哲学的なアプローチとしては、例えばヘーゲルがマルクス主義について書いた文章を再読した。ヘーゲルの『精神現象学』には、いわゆる支配と隷属に関して「主人―奴隷の弁証法」というのがある。そこでは、全てを有している主人が奴隷を支配するが、仕事を委任していくことで次第に権力を失っていく。そして奴隷が権力を得ていく…。
現代のストライキ中の労働者は、まさにこの権力構造が逆転する論理の延長と考えることができる。ストライキでは、労働者の方が雇用主よりも権力を持っている。
この映画の中では、フランスがスティーブを必死に撤退させようとする甘い試みが当てはまる。スティーブの子供を誘拐することによって、フランスは彼に反抗し、不器用にも権力を取り戻そうとする―。
「誰が働くのか?」「誰が権力を持つのか?」というようなクラシックな問いは残念ながら永久的なものだ。プラトンからマルクス主義を経由して現在に至るまで、全くこれは変化していない。ただ単純に世界はもっと複雑になっているだけだ。
もう一つ影響を受けたものがあるんだが、フランス古典主義の劇作家のモリエールで、使用人のキャラクターを描く時に参考にした。彼の作品で繰り返し描かれる使用人のキャラクターには大きな影響を受けたよ。
この作品は、プラスの側面から現在の憤慨する社会状況を語っているが、それは、英語圏で言うところ「士気を高める」ため、そう、あなたを立ち上がらせ戦わせるためだ!(クラピッシュ映画の音楽を担当している)ロイック・デュリーの曲に、こういう歌詞があるんだ。「世界がどこに行くかはあなた次第・・・」。私はこの言葉を信じている。たとえ世界が問題ばかりでも、私たちはそれを受け止める必要性は必ずしもない。私は(不正に対する)反抗精神とレジスタンスを信じている。たとえ、理想的で幼稚な考えだと批判されても、私は「フランスの味方」でありたいと思っている。
1961年9月4日生まれ。フランス出身の映画監督・脚本家。1992年、初めて撮った長編映画『百貨店大百科』がセザール賞にノミネートされ注目を浴び、1996年『猫が行方不明』でベルリン国際映画祭の映画批評家協会賞を受賞。ほか監督作は『青春シンドローム』『家族の気分』『パリの確率』『スパニッシュ・アパートメント』『スナッチ アウェイ』『ロシアン・ドールズ』『PARIS』。
2012年6月15日レンタル開始
2012年8月2日セルリリース
監督:セドリック・クラピッシュ
出演:カリン・ヴィアール/ジル・ルルーシュ/オードリー・ラミー/ジャン=ピエール・マルタンス/ケヴィン・ビショップ
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
『スパニッシュ・アパートメント』のセドリック・クラピッシュ監督作。不況が続くヨーロッパ社会を舞台に不幸続きのシングルマザーが奮闘する、優しくて暖かい、フランス気分満載のハートウォーミングフレンチシネマ。でも結末にちょっとビックリ。
©2010 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURES - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA - Tous Droits Réservés
この映画、タイトルからして一見ラブコメかなと思いきや社会派映画です。前半にはセリフのなかに株取引についての簡単な説明があったり、金融界の駆け引きがそこと全く離れた現場で働く1人1人の労働者の生活をいとも簡単に変えてしまうという構造が描かれていたり、勉強になる内容があります。働く自分がどういう立場に置かれているのかを理解し、それでも現状維持なのか、新しい働き方を考えるのか、考える良いきっかけになると思いますし、ストーリー自体はコミカルにテンポ良く描かれているので、観やすいですよ。
2012.6.27 TEXT by Myson