映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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このコーナー第3回目は品川プリンスホテルのシネマ担当マネージャー補佐で番組編成をご担当されている津田のぞみさんにお話をお伺いしました。
映画館で何を上映するかはどうやって決まるのかなど、映画ファンが気になるお話が聞けました。
また映画館のスタッフによる映画祭『日本シアタースタッフ映画祭』についてもお話して頂きました。
東北地方太平洋沖地震にて、被災した皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
本インタビューは2011年1月20日に行われたものです。
マイソン:
まずは現在のお仕事に就いたきっかけとして映画がもともと好きだったとのことですが、ホテル事業がメインの品川プリンスホテルさんの数あるお仕事のなかでどうやって映画の部署に就くことができたのでしょうか?
津田さん:
映画が好きというのはあったのですが、とにかく多くの人を楽しませる仕事がしたいと思いホテル・レジャー業界を中心に就職活動をしてこのホテルに入社し、始めはホテルの宣伝・企画を担当していました。そんななか映画館ができるという話が出てきて、立ち上げのプロジェクトに入りたいと志願し、映画館の宣伝を担当することになりました。それから3年くらいしたときに今度は映画の番組担当の募集があるということになり立候補して通りました。タイミングが良かったのもありますが、きっかけってわからないものですね。
マイソン:
入社されるときに映画館ができるかもと、少しは期待があったんですか?
津田さん:
そのときは全くそういう話はなかったので期待はありませんでした。でもホテルにはエンターテイメント的な要素があるので、何かしら映画との繋がりは持てるかも知れないとは思っていました。でもまさか映画館ができるとは思っていなかったので、本当にどこにきっかけが出てくるかわからないなと思っています(笑)。
番組編成ってどんなことをするの?
マイソン:
現在の津田さんの役割は番組編成とのことですが、番組編成のお仕事は具体的にはどんなことをするのですか?
津田さん:
映画公開時期の半年前くらいに試写を観たり、作品情報を聞いて、お客様の層に合った作品を選びます。ぎりぎりでしか観られないものもあるので、勘に頼るしかないこともありますし、いろいろなお客様のニーズに合うようにジャンルが偏らないようバランスは考えますね。春休み、夏休みなど公開作品が混む時期は、上映したくても枠が限られているので入りきらないこともあります。あとは都内での上映は何館と決められている場合にこちらが上映したくてもできないこともあるので、思ったとおりにはいかないこともありますね。
マイソン:
観客として「なぜあの作品を上映しないの?」という疑問を持っている方もいるかもしれないですが、地域ごとにかけられる館数が限定されている事情もあるんですね。フィルムの数が限られていますもんね。では同じ時期に同じようなジャンルがある場合は、どういう基準で選ばれるんでしょうか?
津田さん:
まずはお客様に合っているかどうか、最後は自分で観て良かったかどうかですね。映画好きだからこそ偏らないようにしなければと思っています。あとはお電話やスタッフからお客様の感触を聞いたりしてご意見やご要望を取り入れることもありますが、その辺りは大手の劇場さんとは違い、単独館だからこそできる対応かも知れません。
マイソン:
経験上、ヒット作の共通点はこういうところではないかと思うことはありますか?
津田さん:
やっぱり口コミで広まる作品は長く続くなと思います。まず女性が良いと言って、社会現象になって口コミで広がって…という作品ですね。顕著にそのタイプだったのが『私の頭の中の消しゴム』で、あの作品は3週目で一気にお客様が増えました。観終わった後に誰かに伝えたくなるような内容の作品が良いのだと思います。
マイソン:
では、鑑賞する環境作りの点で劇場の規模など使い分けを意識されていることはありますか?
津田さん:
ありますね。お客様の来場数が予想よりも多かった場合は大きい劇場に変更したり、その逆もあります。プレミア館は料金が少し高い分ゆったりと観られる座席なのでその雰囲気に見合った作品を配給会社と相談しながら上映するようにしています。
マイソン:
隣接の託児所もありますが、利用状況はどうでしょうか?
津田さん:
毎週水曜日に1日5組限定で、お子様を預けて、映画を観てカフェでお茶とケーキを食べるという5500円(大人女性1名とお子様1名の料金)のプランがあるのですが、最近ママ友同士のご利用が多く毎回予約で埋まるので、結構ニーズがあるようです。
マイソン:
そういう風にいろいろな方が楽しめる環境が整っているって嬉しいですね。あと、劇場に足を運んでもらうという部分で公開作品そのものの宣伝も重要だと思いますが、そのあたりに関わることはあるのでしょうか?
津田さん:
最近は少なくなりましたが、作品ごとの宣伝会議というのがあって、配給会社の宣伝部の方と劇場の担当者で意見を出し合ったりすることもあります。
マイソン:
それは代表として参加されるんですか?
津田さん:
各劇場さんの番組担当者と、配給会社さんは宣伝と営業の方が出席されます。大手のチェーン劇場さんだとその代表だったり、うちは単独館なので私が代表で出たりします。
マイソン:
そういう部分で言うと、映画の宣伝にも関わったり、このお仕事は守備範囲が広いですね!
津田さん:
そうですね。面白い仕事だと思います。大手チェーン劇場さんなら各担当者がいらっしゃると思うのですが、当ホテルのシネマは単独館なのでタイアップのプラン、舞台挨拶などイベントの段取りなども含め、だいたい全て担当しています。
マイソン:
ほかに単独館というところでチェーンの劇場と違うところはありますか?
津田さん:
自由な面もありますが、あまり思い切ったことをできない面もありますね。あとはグループシネマではないので、自分でいろいろな劇場さんとコミュニケーションを取って情報を得ています。
マイソン:
今のお仕事に就いてみてからわかったこと、この仕事について持っていた印象と違ったと思うことがあれば教えて下さい。
津田さん:
映画業界は女性が多いと思っていたのですが、番組担当には女性がほとんどいなくて、最初はびっくりしました。だから宣伝会議に行くと女性が1,2人くらいしかいなくて、「女性の意見を」となると必ず発言しなければいけなかったり(笑)。でもここ2年くらいで番組編成にも女性担当者が増えてきました。だから入れるチャンスは増えてきたのかも知れません。
マイソン:
この仕事をやっていて良かったなと思うこと、大変だなと思うことを教えて下さい。
津田さん:
やっぱり嬉しいのは、映画は夢とか希望とかを与えられるもので、それをご提供できることです。劇場から出てきたお客様が映画を観て泣いたり喜んだりしている様子を見た時には、この仕事をしていて良かったと思います。大変なことは3Dが増えてきたので、その変化についていくことです。常に情報を得るために色々な人に話を聞いて、変化に取り残されないようについていくようにしています。設備に先行投資しなければいけないけれどヒットするかどうかはやってみないとわからないという部分もありますし難しい判断をせざるを得ない場合もあります。
マイソン:
今の津田さんのようなお仕事に就きたいという女性から「この職業に就く方法」を聞かれたら、どんなことを伝えますか?
津田さん:
道はどこからでも開けられるということですね。私のように全然違うところにいてもこういうチャンスに恵まれるということも稀にありますし、映画館にアルバイトで入ってそのまま業界に入る方もいるので、やりたいと思っていればいつか叶うと思います。あとは自分で情報を得る力も大事だと思います。
マイソン:
ご自身が考えるこの仕事に必要な要素は何だと思いますか?
津田さん:
まずは映画が好きだということがあれば大丈夫だと思います。勝負師的なところも必要ですね。度胸も必要かと…。私ができてるというわけではなくて。
マイソン:
当たる映画かどうかを見極めなければいけないから、ある種ギャンブルですよね。でも自分が選んだ映画が上映されるわけですから、映画好きにとっては憧れの職業ですね。
津田さん:
そうですね。でも日々一喜一憂してますよ(笑)。
マイソン:
では最後に日本シアタースタッフ映画祭に関わっていらっしゃいますが、この映画祭の特徴を教えて下さい。
津田さん:
この映画祭では実際に自分たちが映画に関わっていて、ぜひ皆様に観て欲しい、伝えたいと思う作品を選んでいます。この映画祭のランキングは評論家でなく、一般の方の目線でおすすめ作品を選んでいるので、参考にしていただき、映画を好きになるきっかけになれば嬉しいです。
マイソン:
一般の方に1番近い立場の劇場スタッフが本音で良い作品を選んで発表するというところがこの映画祭の特徴なわけですね。
津田さん:
普段、上映する映画の宣伝はあっても、現場の劇場スタッフからの声としてどんな映画が良いかを伝える機会がありません。この映画祭では私たちからお客様におすすめしたい作品をご紹介したいと思いますのでぜひ参考にしてください。
2011年1月20日取材
〒108-8611 東京都港区高輪4-10-30 品川プリンスホテルアネックスタワー
多彩な作品が楽しめる11スクリーンの映画館。ゆったりサイズのプレミアムシートでくつろげるプレミア館やスタジアム形式の3D作品も楽しめる座席でタテ6.7m×ヨコ16.5mの大画面が特徴のシアターZEROでは迫力を体感できます。隣接して水族館、アミューズメントもあるので、家族でもカップルでもお友だち同士でも一日中楽しめます。
詳しくは品川プリンスシネマのHPへ
品川プリンスシネマに隣接する小学館グループの託児ルーム
dakko room(だっこルーム)
【シネマでママ休みプラン】
映画料金(一般館)・デザートセット(ママ休みプランデザート&ドリンク)・託児料金(映画上映時間+カフェタイム1時間)がセットになったお得なプラン。
実施日:毎週水曜日/1日5組限定
料金:¥5,500 大人(女性)1名・子供1名(消費税込)
問い合わせ・予約:だっこルーム直通03−5475−7411 (10:00A.M. 〜 6:00P.M.)
*プレミアム館を利用の場合は¥1,000追加。
*予約は1週間前の水曜日から。
*前日からキャンセル料がかかります。(前日¥1,000 ・ 当日¥2,000)
2010年4月よりスタートした本映画祭の第2回が4月16日、17日の2日間で開催。この映画祭は全国シネコン・独立単館系を含む全ての映画館で働くスタッフ全員(2011年現在約770名)による投票をもとに、各賞及び上映作品を選出するなど、映画館スタッフが企画・運営し行う「映画に感謝する」映画祭で、名誉会長は漫画家の松本零士氏が務めています。
大賞にあたる「グランシャリオ賞」の由来は春の星「北斗七星」のフランス名で、数多くある星たちの中でひときわ輝く星座ということでこの映画祭の大賞の名称になったそうです。ちなみに昨年のグランシャリオ賞は『サマー・ウォーズ』でしたが、今回の作品選出は2010年3月から2011年2月公開作品より投票にて選ばれるとのこと。ある意味、劇場スタッフの本音を知ることができる映画祭ということで要注目です!
日程:4月16日(土)、17日(日)
場所:サイエンスホール(東京都千代田区・科学技術館内)
プログラム:2011年度「期待作10選」発表/ゲストによるティーチインなど/グランシャリオ賞ほか各賞受賞者の表彰
*チケットぴあにてチケット発売中
詳細はこちら
【義援金について】
東北関東大震災により被災された方々、被災地に関係者のいらっしゃる方々に心よりお見舞い申し上げます。
当映画祭では微力ながら売上の一部および会場に募金箱を設置し、あわせて義援金として日本赤十字社を通し寄付させていただきます。