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映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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2015年9月12日(土)〜24日(木)に開催される“第37回ぴあフィルムフェスティバル(=PFF)”。今回はその総合ディレクターを20年以上に渡り務める荒木啓子ディレクターにインタビューさせて頂きました。PFFから名だたる有名監督たちを輩出してきた荒木さんに、映画祭とはという根本的な問いから、日本人と映画の関係性まで、さまざまなお話を聞かせて頂きました。
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<PROFILE>
雑誌編集、イベント企画、映画&映像の製作・宣伝等を経て、1990年PFFの一環として開催した“UK90ブリティッシュフィルムフェスティバル”でモンティ・パイソン特集を担当。その後、国際交流基金アセアン文化センター主催の“東南アジア映画祭”ヤングシネマ部門プログラミング・ディレクターを経て、1992年、PFF初の総合ディレクターに就任。就任後は、コンペティション部門「PFFアワード」の応募促進や、入選作品選考システムに関するさまざまな改善、若い観客に向けた招待作品部門の充実を図る。招待部門においては国内外の巨匠監督の特集や、アニメーション、スチルカメラマンによる映像表現など、映画以外の映像作家の多くの試みを積極的に紹介。また、日本の若い才能を世界に紹介することを目的にPFFアワード、PFFスカラシップ作品の海外映画祭への出品を積極的に推進。ほかにもPFF関連作品のみならず、日本のインディペンデント映画の海外紹介にも務め、映画による国際交流と新人監督の海外体験、さらに海外での映画製作までを視野に入れた活動を実施している。
シャミ:
まずPFFの総合ディレクターとして具体的にどんなお仕事をされているのか教えてください。
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コンペティション部門“PFFアワード”『みんな蒸してやる』 |
荒木啓子ディレクター:
それまでのPFFには、ディレクターという名前自体はあったものの、各セクションに分かれてディレクターが存在していたので、映画祭全体のディレクターというのは私が初めてでした。だから私も正直この仕事がどんな仕事なのかよくわからないなっていうところから始まりました。だんだんとディレクターの仕事っていうのは、この映画祭の哲学を作ることで、映画祭にとって大事なことや貫かなくてはいけないことなど、その判断基準となるラインを作っていくことだと掴んできました。PFFはいわゆる映画を見せるだけの映画祭ではなく、ほかの映画祭とは相当違っていることを確認するところから始まった感じです。ライブラリーを持っているし、映画も作っているし、やっていることが異質だということがわかってきました。そのなかでPFFが何をやっていくのかっていうことを常に考えて、その基準がブレないように具体的な仕事を構築し、進めていくのが私の仕事です。
シャミ:
お仕事で海外の映画祭などに行くことも多いと思うのですが、見ていて何か感じることなどありますか?
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コンペティション部門“PFFアワード”『大村植物標本』 |
荒木啓子ディレクター:
かつては毎月のように海外の映画祭に参加する時期もありました。良いところはPFFにも導入したいと思いますが、それぞれの映画祭でバックグラウンドも目的も違うので、目指すところが違うものと比較してもしょうがないとわかってきました。有名な映画祭の視察に行って、すぐにその映画祭を目標に置こうとする人たちがいますが、「歴史も目的も違うんだからちょっと乱暴では?」と思ったり、派手なセレモニーを“映画祭”と表現されることも多々ありますが、映画祭ってセレモニーの部分だけじゃなくて、何をやるために映画祭をやっているのかっていう部分がすごく大事だよ〜と言いたくなったり。現在、世界には500を超える映画祭があるのではないかと言われていますが、それぞれの映画祭でしかやれないことっていうのをきちんと理解しあっている映画祭とは大変気持ちの良い関係ができます。私たちの仕事は、映画祭の企画運営ですが、“同業者”との関係は、どんな仕事でも同じことですよね。だから映画祭っていう仕事は、皆さんが日常でやっている仕事と何も変わらないんですよ。
シャミ:
日本の有名監督のなかにPFF出身の方が多くいらっしゃいますが、PFFで監督を選出していくときのポイントはどんなところですか?
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コンペティション部門“PFFアワード”『嘘と汚れ』 |
荒木啓子ディレクター:
普通に何か映画を観たり、小説を読んだりするとき、皆さんが「この人はすごい」って感じるのと同じなので、何も特別な秘訣はありません。この人はすごいなとか、この人には何かあると思って見つけたら、過去の作品を調べたり観たり、次作を心待ちにしたりしますよね?そういう気持ちが湧いてくる人たちが単純に残っているような気がします。
シャミ:
なるほど〜。PFF出身の有名監督がこれだけたくさんいると、そうやって自分も有名になりたいと思う人も多そうですね。
荒木啓子ディレクター:
“有名になりたい”かどうかはさておき、クリエイティブな仕事に共通することですが、有名になったときにはその人は終わっている、という言葉はひとつの真理ではないかと思います。常に有名になった自分を更新できる人っていうのが才能ある人、もしかして、天才と呼ばれる人たちですよね。ピカソとか横尾忠則とか、わかりやすい存在かもしれません。だから常に自分の過去をデリート(消去)できていく人が本当にすごい人だと思います。でもほとんどの人が何か自分のポジションを得てしまうとそこから動きたくないから、世間が認めた瞬間にその人は終わってしまっているということになります。なんだか極端な表現をしてしまいましたが、しかし、留まらない人たちの方がおもしろいわけで、結局は常にチャレンジしている人しか残らないのではという感じはします。
シャミ:
今回のコンペティション部門は若い監督がたくさんいますが、今後そういう天才と呼ばれる人たちもいると思うと将来が楽しみですね。
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コンペティション部門“PFFアワード”『ひとつのバガテル』 |
荒木啓子ディレクター:
学生も多いので、彼らが現実的に社会に出たときに映画を続けていくのかについては、私には正直わかりません。ただ毎回、映画というものづくりに正面からぶつかって作り上げられた作品は残ります。今の世の中には生き抜く力というものが必要で、まさにその何らかの生き抜く力のある作品たちが残っているのではないかと。でも、どの監督もまだまだこれからです。完成した人は一人もいないので、もしかしたら今後ガラッと違う作品を作ることだってあると思います。例えば矢口史靖監督は、今はコメディ映画の人というイメージですが、彼のPFF入選作品はすごくダークな作品だったし全然違うんですよ。ほかにもそういう監督がたくさんいます。いざ自分が映画を続けていくとなったときに作る作品と、自主映画時代の作品が必ず同じとは限りません。でも、映画を続けている人たちには諦めない力のような胆力があります。そういうパワーがあることってすごく大事なことだと思います。
シャミ:
海外の映画祭への出品にも力を入れられていますが、海外の人に観てもらうことでどんな効果を期待しているのでしょうか?
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コンペティション部門“PFFアワード”『異同識別』 |
荒木啓子ディレクター:
それは時代と共に変わっているのですが、私がディレクターになった当時に一番力を入れていたのは、とにかく外国で観てもらうことでした。すでにその当時から映画の世界はどんどん小さくなってきていたので、あらゆるところでチャンスを掴むために、外国の観客を普通に想定したいと思いました。それに当時は自主映画制作に全てを捧げ、パスポートすら持っていない監督が多かったので、初めて外国に行くときに自分の作品と一緒だったら素敵だなって思いました。今は海外出資を得る監督、国際的に活躍する監督になることは、身近な目標なんです。これからの時代は、映画をコンスタントに作り続けていくために、例えば、河瀬直美監督とか、是枝裕和監督のように、世界的なマーケットも意識していくことは当たり前になっています。海外映画祭に映画を出品することは、そのきっかけになります。その先、監督として生き抜くために世界で普遍的な力を持つ映画を作るイメージというか、目標設定は当たり前に必要だと思います。
シャミ:
なるほど〜。では映画を観る側に対しては映画がどんな存在であって欲しいと思いますか?
荒木啓子ディレクター:
特別なものではなくて、日常的にいつでも傍にあるものであって欲しいと思います。
シャミ:
そうなると素敵ですよね。でも最近、映画館に行くのは年に1〜2回で、映画自体観ることも少ないっていう話もよく聞くのですが…。
荒木啓子ディレクター:
その人たちは、映画を観ずに何をやっているんでしょうね?
シャミ:
何をやっているんでしょうね。映画好き以外の人にとっては、たくさんある娯楽のなかに映画が埋もれてしまっていて、なかなか映画を選択する人がいないように感じます。
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招待作品部門“映画内映画”『ロケーション』 ©1984 松竹株式会社 |
荒木啓子ディレクター:
時間を潰す道具を探している人が多いのかも知れませんよね。電車のなかでもゲームをずっとやっている人もいますし。でも時間を潰しながら、新鮮な驚きとか喜びを与えてくれるのが映画で、すごくお得感があるものだと思うんですけど、そのお得感が伝わっていないんでしょうね。なかには映画を観ることで時間を無駄にしたって言う人もいますが、それは自分の“楽しむ能力”の鍛え方が足りないのかも。どんなものでも楽しみ方次第ですが、やっぱり映画を観るとお得なことがあるよっていう雰囲気が急速に失われている気がします。
シャミ:
そうやって人の生活から映画が離れていってしまっていると思うと悲しいですね。例え娯楽の一つだったとしても映画は観るべきだと思いますか?
荒木啓子ディレクター:
一生に一度、浴びるように映画を見続ける1年間、できれば数年間を持っている人は強いと感じています。それに、絶対に安全なものはこの世にはないわけですし、損をしないことばかり考えずに、いろいろなことを体験してみる余裕を持って映画を観て欲しいですね。映画だったら短時間でいろいろなことが体験できるわけですよ。海外にわざわざ行かなくても海外のことがわかるし、国内旅行をしなくても北海道や沖縄に行くことできるわけです。歴史を簡単に遡る体験もできる。それってすごくお得なことですよね(笑)。
シャミ:
映画で世界一周できますからね。私自身、映画を通してその土地のことや歴史について知り、興味を持った部分はかなりあります。
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招待作品部門“映画内映画”『アメリカの夜』 ©1973,Renewed ©2001 Les Films du Carrosse S.A |
荒木啓子ディレクター:
必ずしも映画の情報が正しいとは限りませんが、映画は情報量がとても多い。映画をきっかけに興味を持って、本を読んだりマンガを読んだり、音楽を聞いたり人に話を聞いたりしたら良いと思います。自分がどうしてそこに興味を持ったのかを考えていくと、新しい自分の趣味や出会いが生まれると思います。そういう自分の変化や発見を怖れないで欲しいです。
シャミ:
ぜひそれが皆さんに伝わって欲しいです。皆がそういう意識に変わったら、世の中もいろいろなことが変わりそうですね。
荒木啓子ディレクター:
もっともっと人生を楽しめると思います。今は“楽しむ能力”を押さえ込まれている世の中の空気も濃くなっている感じがありますが、映画を観れば上手い話し方や上手いかわす方だっていくらでも勉強になることがあるし、仕事で生かせることだってたくさんありますからね。
2015年8月31日取材&TEXT by Shamy
会期:2015年9月12日(土)〜24日(木)※月曜休館
会場:東京国立近代美術館フィルムセンター
公式サイト
■今までの主なPFFアワード入選監督
黒沢清、園子温、成島出、塚本晋也、橋口亮輔、中村義洋、佐藤信介、熊切和嘉、李相日、石井裕也など
<荒木啓子ディレクターがトーキョー女子映画部ユーザーにオススメしてくださった今年のPFFの見どころ!>
★コンペティション部門(20作品)
荒木啓子ディレクターより
今回は女性監督が5名いますが、どの女性監督の作品もかなり強烈です。この女性監督たちの作品を観て、「私の方が才能ある」って思ったら、ぜひ映画を作ってみてください!スマフォでも何でも撮った時点であなたは映画監督です。
★招待作品部門「映画内映画〜映画は映画をつくることをどのように描いてきたか〜」
荒木啓子ディレクターより
映画作りの現場を観ることで、人間の赤裸々なせめぎ合いのおもしろさが伝わってくると思います。職場関係のヒントを得たい人はこの特集作品を観て、人とどう接していけば良いのかっていうことを発見してもらえたらと思います。