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旦那に育児をしてもらうには、妻が子どもを任せる勇気も必要!
佐々木蔵之介と永作博美が夫婦役を演じ、ガンの闘病生活を描いていながら笑って泣けるコメディ『夫婦フーフー日記』。今回はその原作者である清水浩司さんにインタビュー。本作は、清水さんが書いた闘病ブログの書籍化「がんフーフー日記」を原作に、死んだはずのヨメが現れたというエピソードを加え、その後のストーリーを描いた物語となっています。ガンだった奥様を亡くし、シングルファーザーとなった清水さんに、ご自身の経験と男性の育児への関わり方について聞いてみました!
清水浩司
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1971年、広島県生まれ。広島を拠点に執筆活動を行うほかラジオコメンテーターとしても活躍中。2009年に結婚したヨメに、妊娠後まもなくガンが見つかり、闘病ブログ「がんフーフー日記」をスタート。2011年に川崎フーフ名義で書籍「がんフーフー日記」(小学館刊)を発表し、同作が『夫婦フーフー日記』として映画化。そのほか著書に、「文芸レアグルーヴ〜ぼくたちが読みたい日本文学100冊」(共著/マーブルトロン/中央公論新社刊)、小説「ぼんちゃん!」(小学館文庫刊)などがある。2015年3月には『真夜中のヒットスタジオ』(小学館文庫刊)を発表。
シングルファーザーの経験を通して感じた育児の責任感
シャミ:
本作は、清水さんが書かれた本をもとに映画化されましたが、実際に映画をご覧になってみていかがでしたか?清水浩司さん:
これまで感じたことがない不思議な気持ちになりましたね。佐々木蔵之介さん、永作博美さんという素晴らしい役者さんが自分たちの役柄を演じてくださっているのもそうですし、自分が体験したことを改めて俯瞰して眺めているというか。映画の中のヨメじゃないですが、なんだか自分自身が幽霊になって過去の自分を振り返っているような感じでした。果たしてこれを皆さんが観て何を思うのか不安な気持ちもありますが、でも今は、多くの人に観て頂けるということにすごくわくわくしています。シャミ:
映画のなかにもありましたが、亡くなった奥様とは17年間ずっと友達でそこから関係が発展して結婚相手になったということですが、これは事実ですか?清水浩司さん:
女子的にはやっぱり気になりますよね(笑)。はい、恥ずかしながらこれは事実です。当時お互い30代後半で、結婚、子ども、仕事など将来についていろいろ考える時期でもあって。そのときに彼女に「私、お見合いするから」と捨て台詞のように言われて、それをきっかけに「やはり自分には彼女しかいないんじゃないか?」という結論に辿り着きました。シャミ:
なるほど〜。映画のなかで広島と東京を行き来する場面もありましたが、奥様が病気で亡くなった後のシングルファーザー期間は、どんな風に子育てと仕事を両立させていたのでしょうか?清水浩司さん:
僕は妻が亡くなってから実家のある広島に戻ったんですが、そこで両親の助けを借りながら育児をしていました。実はそれ以前は、ヨメの実家がある福島でしばらくお世話になっていたんです。だけど東日本大震災が起こってしまい、将来のことを考えた末に広島に戻ることが一番かなと判断して。息子をどこで、どのように育てるかというのは最終的には父親である僕が決めなければならず、そのときは子どもを抱えているという責任感を強く感じましたね。シャミ:
シングルファーザーの経験を通じて何か子育てについて感じたことはありますか?清水浩司さん:
僕はシングルファーザーとしてすごく有意義な時間を過ごせたと思います。今は育児に参加する男性も増えていますけど、それでも息子をどう育てていくのか、自分がこの子の親であり最終決定者が自分であるという感覚はちょっと格別なものがありました。「あくまで奥さんがメインで、自分は育児のサポート」という感覚ではなく、「この子の未来を決定するのは自分しかいない」という責任感…。おかげで、より息子や家族の存在を深く意識できたと思っています。シャミ:
最近、“イクメン”という言葉も流行っていますが、男性が子育てをすることに対してはどうお考えですか?清水浩司さん:
絶対にやった方が良いですよ。社会的にも男性が子育てできる環境をもっと作った方が良いと思います。僕は会社勤めの経験もあるので、仕事で遅くまで帰れなかったり、育児休暇がとれないのもよくわかります。だけど、育児には仕事とは違う価値観がありますし、それを知っておくことは人生の幅を広げることに繋がると思うんです。たとえばいくら仕事ができるビジネスエリートでも、泣いている子を前にしたらまったく無力だったりするんです。育児の世界では、営業成績がいい人よりも子どもに人気がある人の方が勝ち組だったりするんです(笑)。今も僕は、保育園の送り迎えをしてて知らない子どもと仲良くなれると「やったー!」ってガッツポーズ作りますからね(笑)。シャミ:
すごく素敵ですね!それは仕事の達成感とは違いますか?清水浩司さん:
違いますね。生きていく上で仕事という世界はもちろん大事だけど、世界はそれだけでできているわけではない。おかげで自分に足りないものが知れたり、新しいスキルが身に付けられたりいろいろ教えてもらいました。あとママに対するアドバイスとしては、たまには子どもを1日パパに預けて「私、遊びに行くわ」と出かけて欲しいですね。「この子は私がいないとダメなの!」って思い詰めてる人もときどき見かけるので。任せることで自分も息を抜けるし、任されることで男性も育児に自覚的になる、そうなると2人とももっともっと楽しくなれると思うんです。シャミ:
では、本作をどんな方に観て欲しいですか?清水浩司さん:
単純に笑って、おもしろかったって言って欲しいですね。もちろんガンについて身近でない方もたくさんいると思うんですが、こういう闘病もアリなんだな、こういう夫婦もアリなんだって思って欲しいです。夫婦や友達同士でも良いですし、結婚予備軍の女子にも良さそうですね!あとは草食系の男子とかですかね。面倒なことが嫌な男子に観てもらって、「結婚とか恋愛とか友情とか、面倒なことを背負いこむのも案外悪くないかもな」って思って頂ければと思います。
『夫婦フーフー日記』
2015年5月30日より新宿ピカデリー他全国公開
監督:前田弘二
原作:川崎フーフ(=清水浩司)
出演:佐々木蔵之介 永作博美 /佐藤仁美 高橋周平 / 並樹史朗 梅沢昌代 大石吾朗 吉本選江 宇野祥平 小市慢太郎 / 杉本哲太
配給:ショウゲート
作家志望のコウタは、本好きなユーコと出会って17年目にして結婚。その直後、ユーコの妊娠とガンが発覚し、幸せな生活は一転して闘病生活へ。ダンナは、ヨメの病状と誕生した息子ぺ〜の成長をブログで報告し始める。しかし、入籍からわずか493日後にヨメとの別れが訪れる。悲しみに暮れるダンナだったが、ブログの書籍化の話が舞い込み念願の作家デビューに現実逃避する。そこへ突然、死んだはずのヨメが現れ…。©2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会
2015.4.27 取材&TEXT by Shamy