今回は、特殊な世界で生きてきた主人公に起こる変化を描いた作品を題材にしました。
ツイート死の谷間
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<1人から2人、そして3人に> |
町がある谷の外側は全部汚染されている状況で、町の人達は皆、外に家族を助けに向かったまま帰らず、アンは1人取り残されています。そんな彼女が1番辛いのは、話す相手がいないこと。そこへ突如現れたジョンは、アンにとって大きな希望となるのも頷けます。でも、2人しかいない世界ということが、逆に2人の関係を複雑にします。信仰や、この世界でどう生きてきたかということが、価値観に大きく影響しているからです。これまですべて1人で決めてきたアンでしたが、ジョンの考えも尊重して、妥協しなければいけない部分も出てきます。でも、さらにケイレブが2人の生活に入りこみ、人間関係はより一層複雑になっていきます。何か決める場合でも、3人なら多数決も成立するし、敵、味方というものの見方が顕著になっていくのがわかります。1人から2人、3人へと増えていくだけで、これだけ人間関係に変化が起こるのかと、実感するストーリーです。 |
ブリグズビー・ベア
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<ずっとしがみついていたもの> |
とんでもない事実に直面するジェームス。その内容はネタバレになるので伏せますが、彼がどんな環境に移ろうと、“ブリグズビー・ベア”は、ジェームスにとって、心の拠りどころとなっています。一方で、“ブリグズビー・ベア”そのものが、辛い事実を想起させるものでもあるため、周囲の人間は、“ブリグズビー・ベア”への彼の関心をそらそうとします。でも、外界から閉ざされて生きてきた彼にとって、“ブリグズビー・ベア”の存在は大きく、簡単には切り離せません。他者からどんな風に見えようと、その人自身が作り上げてきた世界は、当人にとっては一番心地良い場所。たった1人の世界を変えるといっても、思ったより難しいと実感します。 |
すべては自分の意志次第とも言えますが、個々に生きていく術として作りあげた世界は、そりゃ簡単には捨てられないですよね。1人の人生を変えることすら難しいんですから、複数の人で成り立っている世界を変えるのはもっと難しいなと思います。
2018.6.12 TEXT by Myson