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『ハンナ・アーレント』
2014年8月5日ブルーレイ&DVDリリース(レンタル同時)
2014年7月30日部活実施
TSトーキョー社内にて
鑑賞会&座談会
公式サイト 作品詳細
映画批評&デート向き映画判定
※一部、ネタバレする箇所があります。
ユダヤ人迫害問題だけにとどまらず、人類の悪とは何かというのが真のテーマ
マイソン:ではまず感想をお願いします。
Aさん:始めは難しいと思いましたが、最後の講義シーンでわかった気がしました。実話なので関連本を読んだらもっと理解できるのかなと思いました。
Bさん:私はハンナ自身に魅力を感じました。最後の講義のシーンは見応えがあって、すごく惹き付けられました。
Cさん:私はハンナの考え方にすごく共感できました。彼女の考え方にヒステリックな反応をしていた人たちが、実際には彼女の書いた文を全く読んでいないのに、みんなが批判しているのに同調している感じで、彼らの方に凶悪さを感じました。
Dさん:題材はナチスの話ですけど、ユダヤ人の迫害よりももっと哲学的なところが描かれた映画だと思いました。思考することをやめたことによって起きた歴史的悲劇という部分では、この映画を観た人たちに考えさせられるような定義の仕方をしていておもしろかったです。
Eさん:自分が伝えたいことを伝えるっていう、ハンナの強さに惹かれました。あと私たちが学んできた歴史が、ある一方から見た人のものに偏っているというのをすごく感じて、特に日本だとそういうのが多そうですよね。日本では英雄って呼ばれている人も海外の人からしたら虐殺者って言われている人もいるかも知れませんし、自分が知った情報をそのまま受け入れるんじゃなくて、きちんと判別していく必要があるなって思いました。
マイソン:ハンナが「許すことと理解を試みることは違います」って言っていたのですが、日常でこういうときに同じことあるなって思うことはありますか?
Fさん:たぶん旦那とか母親とかがそうかなと思っていて、私の母親は古い人なので「日本の女は結婚するべきだ、大学はどこに行くべきだ、会社は良いところに行くべき」とか言うんですけど、私としてはそういう考え方に共感はできないけど理解して生きているんですよね。逆に母親もそうなんだと思います。映画の場合は、アイヒマンの罪を許す許さないという問題と、犯罪の背景や理由を理解するとではまた別ってことですよね。
マイソン:時代劇で「罪を憎んで人を憎まず」という言葉がありましたが、同じようなことですよね。
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Fさん:私は今日2回目の鑑賞でした。もともとナチス系の問題を扱った映画が好きでよく観るのですが、そのなかの1本としてすごく気に入っています。一概にナチスはこういう迫害をやりましたっていう映画ではなく、ハンナをツールとして問題提起をしている映画だと思います。ハンナはアイヒマンがどうとかじゃなくて、人はそういう状況に陥るものでしょっていうことが言いたいだけなんですよね。例えば、現代でも「みんなが就職するからします」とか、「みんなが大手企業に行くから私も行きます」とか、そういうことが思考の停止なんだと私は思います。会社で「これってどう思います?」みたいな提案をしても、その提案に対して議論するというよりも、「君はこのチームの協調性を崩すつもりなのか」みたいなことを言われることがあります。だからこの映画は、題材がナチスだっただけで、本質の問題はそれこそ汎用的な今現在日本でも起きていることなんだと思います。
Gさん:ハンナが言っていることは正しいと思うんですよ。でも逆に言うとそこにやっぱり自分の主観も入っていて、結局あの人は裁判を傍聴しに行って、その裁判を客観的に伝えたかったのか哲学したかったのかっていうところが、あまり理解できませんでした。ハンナは強い女性で、すごく虚勢を張っているけど、結局自分の苦しみのなかで思考することで逃げているっていうのも一つあるのかなって思うんですね。
Gさんは講義のシーンで、ハンナが話す内容についてもう一度よく聞いてみたいとも話していました。一回目でわからないところがあったとしても、一通りの流れをわかった上でもう一度観るとまた違う解釈が生まれるかも知れません。
Hさん:私はあまり重く考えないで観ましたが、ハンナ自身が思考する力を持った人間だったがゆえに招いた不幸だったんじゃないかなと思いました。凡庸って言葉が出てきたじゃないですか。つまり一般の人たちは皆目の前にあるものを受け入れて生きているんですよ。でもハンナは与えられたものだけでなく、思考するっていう力を持っているがためにすごく辛い生き方をしている人なんだと思います。
Iさん:私は大学生なんですけど、皆さんの話を聞いていたら私も思考停止状態になっているのかなって思いました。これから就職のことも考えないといけないんですが、やっぱり「みんなが就活するから就活しよう」とか簡単に思っていました。いろいろ考えていることはあっても、なかなか言葉にならなくて、自分のなかだけで完結っていうことが多くて。あとは政治的ことに関しても、無関心なのかなって思ったりもするんですけど、実際に自分に何ができるのかもわからなくて、でもそれを考えるのをやめたら無関心になってしまうのかなっていう無限ループ状態です。
この映画を観ると、「自分も思考停止人間になっているかも」とか、「無関心になってしまっているかも」と考えさせられます。物事に無関心過ぎてもダメですが、考え過ぎてダメになってしまうこともありますよね。難しい…。
マイソン:この映画をどんな人にオススメしたいですか?
Hさん:薦めるとしたら「人間は考えることがすごく大事ってことを考えさせられる映画だよ」ってことですかね。一人一人がきちんと考えることができたら、平和が大事ってことにきちんと行き着くと思うんですよね。だからちゃんと考えることに気づきたい人とか、学生さんに向いているかも知れないですね。
Gさん:私は政治家に観て欲しいです。あとは大学で哲学とか心理学を専攻している人はわりとのめり込む題材だと思います。でも観るんだったら一人か、真面目にこの映画を一緒に観てくれて意見を戦わせてくれる人なら良いですよね。
Iさん:妹とちょうど思考することについて話していたばかりなので、私は妹にオススメしたいです。いろいろな考え方がある映画だからそれを共有できたら良いなと思います。悩みがいっぱいあったとしてもいろいろな解決方法があるということに気づくと思うし、重い内容だと思ったとしてもそれはずーんという気持ちになるのではなくて、考えようって前向きになれるんじゃないかと思うので、妹と一緒に考えたいと思います。
Eさん:私は会社のなかで意見を言いたいけど、言えなくて裏で言っている人たちに観て欲しいです。思っていることを言うことでバッシングはあるかも知れないけど、そういう強さを持つことも大事だよねっていうのとか、言わないと伝わらないことってあるなっていうことを感じることができると思います。ただ、あんまり凝り固まっている人だと、観てもサラッと「こいつが悪いよ」って言って終わりそうなので、考えを柔軟に受け入れてくれる人にオススメしたいです。
マイソン:信頼のおける友だち同士だったら、感想を言ったときに「私はこう思ったけどあなたはどう思う?」ってやり取りをすることができますよね。相手と意見が全然違ったとしても「そういう解釈だったのか」って思えたら、両方の理解力が上がるかも知れませんよね。
Fさん:マネジメントしたり、人など影響力を与える人ほどこの映画を観て、これが正義かどうかじゃなくて、「それもアリでしょ」というように柔軟な人が増えたらもうちょっと日本は良くなる気がします。
Dさん:中学生とか高校生が授業でこの映画を観て、観終わったらディベートをするとかはどうでしょう。戦争をしてはいけないとか、差別をしてはいけないっていうのはみんな共通していると思うんですけど、戦争した理由とか背景の善し悪しの考え方は違うと思うので、それを子どもたちが自分なりの言葉で意見交換するのは、思考することの練習になるのかなと思います。それが難しければ、教員の方たちに同じように観てもらって、意見交換して、ディベートの練習をして、子どもたちの人格形成とか教育に生かすみたいな。
Cさん:私は映画が公開されたときに中高年の方が、劇場に並んだと聞いたので、まずはその層にオススメしたいです。中高年の方も若い頃は、議論したり考えたりしたけど、当時何も動かなかったから最終的にことなかれ主義に考えを変えたっていう見方もあると思うんですよ。でもやっぱり自分のなかのそういう「燃えたぎる気持ちをあなたたち忘れていませんか?」っていう意味で、「ことなかれ主義になっていませんか?もう一度思い出してみませんか?」っていうことでやっぱり年配の人に観て欲しいと思います。
マイソン:岩波ホールで公開されたんですが、初日土日は満席で、岩波ホールでは10年ぶりの記録更新だったそうで、その後も連日行列ができていたようですよ。
一同:すごーい!!
Aさん:今はネットがあるから、もしハンナが現代にいたらもっとバッシングされたと思います。普段は1つのニュースに対して偏った意見を言う人たちが、同じ映画を観たらどう言うのかとか、自分が批判している側だと自覚するのか、そのままでいいやって思うのかが気になります。なので、ネットのニュースとかで偏ったコメントをしている人たちに観て欲しいと思います。
皆さん真剣に考えて頂き、それぞれが意見をぶつけ合う白熱した座談会となりました!“思考すること”については会社など身近な話から日本が抱える問題点まで、かなり深く語り合いました。
ナチスやユダヤ人の迫害について題材として取り上げられている物語ですが、ハンナ・アーレントという女性の強さや哲学的な要素の方が印象に残る素敵な作品です。普段、いろいろなことに矛盾を感じている方、自分の思っていることをなかなか伝えられていない方には特にオススメです。ぜひ観てみてください。
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『ハンナ・アーレント』
2014年8月5日ブルーレイ&DVDリリース(レンタル&デジタル配信同時)
監督・脚本:マルガレーテ・フォン・トロッタ
出演:バルバラ・スコヴァ/アクセル・ミルベルク/ジャネット・マクティア/ユリア・イェンチ/ウルリッヒ・ノエテン/ミヒャエル・デーゲン
ポニーキャニオン
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
ご購入はこちら→ ハンナ・アーレント [Blu-ray]
アメリカへ亡命したドイツ系ユダヤ人のハンナ・アーレントは、第2次世界大戦中にナチスの強制収容所から脱出。1960年代初頭、何百万ものユダヤ人を収容所へ移送したナチス戦犯アドルフ・アイヒマンが逃亡先で逮捕され、ハンナはイスラエルで行われた歴史的裁判に立ち会い、ザ・ニューヨーカー誌に発表したレポートの衝撃的な内容が世論を揺らがす…。誰からも敬愛される高名な哲学者から一転、世界中から激しいバッシングを浴びることになった女性ハンナ・アーレントの実話。
©2012 Heimatfilm GmbH+Co KG, Amour Fou Luxembourg sarl,MACT Productions SA ,Metro Communicationsltd.
2014.7.30 event