2014年8月5日ブルーレイ&DVDリリース(レンタル同時/左記ジャケはセル用DVD)
ポニーキャニオン
公式サイト
ハンナ・アーレント [Blu-ray]
皆から慕われ尊敬されるユダヤ人哲学者のハンナ・アーレントの実話。ナチスのユダヤ人虐殺にまつわる映画はこれまでもたくさんありましたが、今作はこの史実に違ったアプローチをしている部分でとても新鮮でした。ナチス戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴した彼女は、自身も強制収容所での辛い経験をした身でありながら、あくまで哲学者としての立場でアドルフ・アイヒマンという人間を分析し、本当の悪についての論説を世の中に発表します。それが大バッシングを受けるのですが、印象的だったのは、大学の教壇で彼女が語った「許すことと理解することは違う」という弁明です。こんな経験をしていないので簡単に気持ちがわかるわけはありませんが、こういう折り合いの付け方をするハンナ・アーレントは偉大な人だと思います。結局のところ、戦時中に起こった多くの悲劇については、誰が悪いのか、明確に責任を負わせるのは難しい部分があると思います。本作で語られているハンナの分析についても私はとても納得がいきました。もちろん虐殺を行った人間をかばう気持ちはないし、罰せられて当然ですが、人間が過ちを繰り返さないためにも、ハンナの分析を一つの考え方として認める必要があるのではと思いました。人間の本当の悪について生きているあいだずっととことんまで考え抜いたというハンナ。答えを出すのは彼女だけではなく、この世にいる私たち全員なのではないでしょうか。ただの伝記映画、史実にまつわる映画というのではなく、概念を学ぶためにぜひ多くの方に観て欲しい深い作品です。 |
ナチス戦犯にまつわる内容とはいえ根底にあるテーマは「人間の悪」についてで、堅いテーマではありますが、人間の価値観を問う内容です。なので真剣交際しているカップルは一緒に観て、どう感じたか、ハンナの理論が理解できるかなど語ってみると、相手の人生観がよりわかるかも知れません。ウキウキ過ごしたいデートの日に観る内容ではありませんが、ハンナの夫婦のやりとりなども少し参考になる部分があると思いますよ。 |
ナチス戦犯の裁判にまつわるお話とはいえ、残酷なシーンはありません。キッズには少しハードルが高い内容ではありますが、「本当の悪」について考える課題としてはとても良い映画だと思います。キッズはできれば親子で観て、一緒に語り合ってもらえたらと思う作品です。ティーンはお友だち同士で観て議論するのも良いと思います。 |
関連記事:
■【映画を処方】特別号:劣等感、挫折感、不幸感、そして役割が人を狂わせる
■トーキョー女子映画部第40回部活・女子限定試写会/座談会リポート
©2012 Heimatfilm GmbH+Co KG, Amour Fou Luxembourg sarl,MACT Productions SA ,Metro Communicationsltd.
2014.7.30 TEXT by Myson