本作は、『先生を流産させる会』で長編デビューを果たし、『ライチ☆光クラブ』『ミスミソウ』などを手掛けてきた内藤瑛亮監督のオリジナル作品で、実際に起きた複数の少年事件に着想を得て、いじめによる死亡事件を起こした加害少年とその家族、そして被害者家族の姿を描いています。
いじめをテーマにした作品ですが、本作の場合はいじめから死亡事件にまで発展してしまい、犯罪を犯してしまった中学生の主人公がどんな運命を辿っていくのか、また、親がどのように接していくのかが中心に描かれています。普通の流れなら、「悪いことをしたんだから、そのまま少年院に入って罪を償うのが当たり前でしょ」と思うのですが、本作の場合はそういうわけにはいかず…、その後の展開は本編を観て頂くとして、実際にこういうことがあると思うとかなりゾッとしました。それと同時に、もし自分が主人公と同じ立場だったら、また、親の立場だったら、どうするのか想像してみると、登場人物達の行動を100%否定できない部分もあるので、より考えさせられました。 いじめは人それぞれで原因や背景が異なり、これをしたらなくなるという正解がないので、本当に難しいテーマですが、こういう作品を観て、ちょっと立ち止まって考えてみることが大切なのも知れませんね。観る人の年齢や立場、環境によっても感想はさまざまになりそうなので、ぜひご覧頂き、ご自身の感情と向き合って頂けたらと思います。
デートで気軽に観られる作品ではありませんが、付き合いの長いカップルなら、たまにはこういったシリアスなテーマの作品を観て語るのもアリかも知れません。主人公は中学生ですが、親、被害者家族など、主人公と関わる大人達も物語でかなりキーとなっているので、この大人達の対応をどう思うのか、自分達が同じ立場だったらどうするのかなど、話し合うとお互いの深い考えを知るきっかけにもなりそうです。
主人公と同世代にあたるティーンの皆さんがどう受け止めるのかが、1番気になるところですが、いじめをなくす方法を考える一歩として、まずは本作を観ていじめについて“考える”ということから始めてみてはいかがでしょうか。また、本作では主人公を取り巻く大人の存在の重要性も考えさせられるので、これを機に周囲の信頼できる大人と話し合ってみるのも良いと思います。
『許された子どもたち』
2020年6月1日より全国順次公開
PG-12
SPACE SHOWER FILMS
公式サイト
©2020「許された子どもたち」製作委員会
TEXT by Shamy