2017年1月28日より全国順次公開
ファインフィルムズ
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親の愛とは何なのか、相手を信じるとはどういうことか、自分の倫理観に矛盾はないか、さまざまなことを考えさせられる作品です。不正がはびこる母国のルーマニアに失望し、我が子だけは外国で勉強させたいと強く願う主人公のロメオ。しかし、成績優秀で何の問題もなくイギリスに留学できると思っていた娘のエリザが、試験当日に暴漢に襲われてしまいます。大事には至らないものの、エリザの心の動揺が心配なロメオは、医師である自分の立場とコネを利用して教育機関の偉い人に娘を受からせるよう不正を持ち掛けます。ロメオにとって、それはタイトルどおり“エリザのために”なのですが、果たしてそれは本当に彼女のためになるのでしょうか?そして、ロメオ自身もまた、嫌悪していた腐った社会を構成する一員になってしまう矛盾を、どう心に落とし込んでいくのでしょうか。重いテーマでありながら、巧みに心理をついてくる脚本と不穏な緊張感で、最後まで魅入ってしまう作品です。ぜひ、ご自分の心と照らし合わせてご覧ください。 |
楽しさ、ロマンティックさといった要素は見つかりませので、デート向きの作品ではありませんが、結婚を見据えたカップルが、お互いの倫理観を話し合うには良い機会になるかも知れません。また、お子さんをもつ夫婦で観れば、道徳教育について話し合う機会にもなると思います。ただし、本作の主人公ロメオと妻は家庭内離婚中でロメオには愛人もいるので、同様の問題を抱えている夫婦は一緒に観ないほうが良さそうです。 |
キッズには難しい内容の作品だと思いますが、ティーンの皆さんには、本作を観て自分がエリザの立場だったらどうするかを、ぜひ考えてほしいと思います。もし、親が試験でズルをすることを薦めてきたら、皆さんはどう思うでしょうか?自分のためを思ってくれていても、心から「やったー!」と思う人は、きっと少ないですよね。また、エリザ自身は地元にボーイフレンドもいて、留学に対してそれほど強い願望もないように見えます。親子であっても、言葉にしなければ伝わらないことはたくさんあります。親が自分のためを思ってしてくれたことでも、もし間違っていると思ったら、ぜひ勇気をもって話し合いをしてみてください。 |
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2017.1.24 TEXT by min