2014年5月10日より全国公開/R-15
アンプラグド
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1977年、写真家である母がまだ子どもの実娘のヌード写真集「エヴァ(初版タイトルは“鏡の神殿”)」をアートとして世に排出し、さらに最年少でPLAYBOYに載った少女としてセンセーショナルを巻き起こした少女の実話を、写真集の発売から34年経った2011年にエヴァ・イオネスコが自ら監督し作った自伝的作品です。アートなのか、児童ポルノなのか、当時も世界中で物議を醸していたようですが、これは観る人によって捉え方が違うのは否めないでしょう。もちろん34年の時を経てもそれは変わらず、この映画も日本の映倫では最初「区分適応外」と判断され、公開まで時間がかかったとのことです。その後配給会社の努力が実り、この作品が決して児童ポルノを推奨するものではないということを理解され公開に漕ぎ着けたようですが、ちょうどエヴァ・イオネスコ監督と、主演のアナマリア・ヴァルトロメイが来日した日の舞台挨拶イベントで本人たちを前にR-15指定で公開されることが発表されました。この日、監督自身も話していましたが、この作品はエヴァ・イオネスコ監督が少女時代に母に撮られたような写真と決して同じにしないで欲しいということ。エヴァの体験をそのまま映画のなかで再現することは、自分も同じことを主演のアナマリア・ヴァルトロメイにさせることになってしまいます。だからそうならないように、際どいシーンやヌードは撮ることなく演出されています。そして、大切にしたいのは母と娘の愛の物語でもあるということ。そのことは本作を観ればちゃんと伝わってきます。問題を抱えている母、そして母を愛し理解しようとする娘、でも、明らかに娘にとっては限界を超えてしまい、34年経って映画化されたのも、エヴァ・イオネスコ監督が背負ってきたものがそれだけ重かったからなのではないでしょうか。 大人になろうと始めは背伸びする娘がすごく大人びてしまい、同時に内面ではまだ子どもでいたい気持ちを抱えているいるという複雑な心情を、今作が映画初出演のアナマリア・ヴァルトロメイが見事に演じ、本当に美しくて、あどけなさが危なげに見える妖艶な雰囲気と、無邪気さを表現しています。そして、孤独と絶望を抱えつつ、それを隠すかのように強い自我を示すことで自衛しているかのような複雑な内面をもった母を演じたイザベル・ユペールの演技も見どころです。狂気と愛が入り混じる彼女の行動は、完全に不可解とも言えず、彼女の行為を認めるということではなくとも共感できる点はあります。いろいろな面で女性必見の作品です。 |
デート向きではありませんが、男性の感想も聞いてみたい作品ではあります。でも母と娘の話として、そして女性の性の捉え方の話として、やっぱり女性同士で観るか、一人でじっくり観る方が良いと思います。作品のセンセーショナルな部分だけをオモシロがって軽く観て欲しくはない作品です。なので、観終わったあとに一歩間違えて男子が失言すると、ドッと冷める可能性はあります。悪気がなく失言する場合もありますが、いかにもそういうことを言いそうと始めからわかっている人は誘わない方が良いでしょう。 |
主人公のヴィオレッタの心情は子ども心にどう見えるのか意見を聞いてみたいところですが、残念ながらR-15なので、キッズや15歳未満のティーンは観られません。15歳以上のティーンは、だんだんとおませになっていくヴィオレッタの心情に近い感覚で観ることができるかも知れませんが、自分の意思以上に、勝手に大人にさせられるヴィオレッタの状況をみて、今子どもでいられるということの大切さを少し感じてもらえると嬉しいです。時が経てば誰だって大人になれるけど、子どもに戻ることはできない。いつまでも子どもとして心配しかまってくれる親がいることを疎ましくなる年頃だと思いますが、いろいろな親子の愛情表現があることを知って、自分の家族についても考えてみてください。 |
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2014.4.23 TEXT by Myson