2015年2月21日より全国公開/R-15
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
本作は、「多くのアメリカ人を救いたい」という純粋な思いで兵士になったクリス・カイルの半生を描いた実話。彼は2003年にイラク戦争が始まってから4回にわたり戦地に向かい、米軍史上最多160人を射殺した伝説のスナイパー。仲間を救うために相手を狙撃するわけですから、味方からすれば英雄ですが、戦地では自爆テロや攻撃に加わる子どもや女性も殺さなくてはいけないし、敵味方問わず多くの死を目の当たりにするので、無事帰還しても尋常な精神でいられるわけはありません。彼にも奥さんや子どもがいて、家族にとっても彼は必要。でも、彼は戻ってきても彼の心は戻ってこないと妻が嘆く姿も描かれています。彼はその思いに応えるべく日々努力をしますが、結末があまりにも切ないのです。実話なので余計に、結局これが戦争がもたらす現実なんだと突きつけられ、虚しさでいっぱいになります。 これまでたくさんの戦争映画が作られてきて、そこから何を学べば良いのか、いつも考えさせられ、当然ながら毎度「戦争は無意味だ、不毛な行動だ」という結論には行き着きます。でも、それだけで良いのか、もっと何か気付かなければいけないことがあるはずだということも毎回感じてきました。そんな思いで今回も観たのですが、私たちは戦争映画を観て「戦争は無意味で、誰のためにもなっていない」ということを客観視できるけれど、イラクなど戦地で実際に苦しんでいる人たちはそんなことを考える余地すらなく、いくら外部からあれこれ言ったりやったりしても、通じないのは当然なのではないかなと。こういってしまうと戦争映画そのものの意義を否定しているように聞こえるかもしれませんが、そうではなく、戦争映画で先進国の人々が戦争の無意味さを忘れないように啓蒙しつつ、武力で助けるということ以外の手助け、たとえば現地の子どもたちに教育の機会を与えたり、大人に対してももっと客観的な情報を与えるなど、別のやり方を考える風潮になれば良いのにと思いました。政府や軍事関係者には他に思惑があるからいつまでも戦争がなくならないのかも知れませんが、結局戦地に行かされるアメリカ兵士だって一般人で、結局彼らがこんなに大変な思いをしても、報われないという現実が本作に描かれています。本当に何とかならないのか、もどかしい思いでいっぱいになりますが、とにかく、まずこういう現実があることを目撃するだけでも、私たちにできる一歩なのではないでしょうか。 |
デート向きの内容ではありませんが、夫婦で生きていく上での価値観なども描かれているので、カップルや夫婦で一緒に観て話し合うのは有意義だと思います。戦争を経験した兵士とその家族の物語で、戦争が人の人生に及ぼす影響は、単純に仕事か家庭かという問題と比べ物になりませんが、それでも家族の存在がいかに大きく、生きる糧になるかということが実感できる内容なので、特にご夫婦は一緒に観て改めて家族が大切だという思いを共有して欲しいと思います。 |
R-15なので、15歳未満の人はまだ観られませんが、大きくなったらぜひ観て欲しい映画です。日本も昔戦争を経験して、「戦争はしてはいけない」という教訓を得たはずですが、戦争を経験した世代の方たちがだんだんと高齢になり、これからどんどん直接お話を伺う機会はなくなっていきます。そうなると、せっかくご先祖様たちが犠牲になり教えてくれたことが忘れ去られていきます。そうならないように、国は違っても、戦争に行って多くの人が苦しんでいる現実を、戦争映画を通してでも知ることは大切だと思います。一方の国の立場だけでなく、あらゆる視点で観ることも大切。直接できることはなくても、なぜ戦争が起こってしまうのかと一人一人が考えるだけでも意味はあると思います。 |
関連記事:
■第62回部活座談会リポート
■TJE Selection イイ男セレクション/ブラッドリー・クーパー
© 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
2015.2.9 TEXT by Myson