2012年2月25日より全国公開
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ウィリアム・シェイクスピア最後の悲劇【コリオレイナス】を現代を舞台に新たな解釈で描いた本作。セリフのところどころにシェイクスピア作品らしさが漂っていました。邦題は『英雄の証明』というテーマが描かれているという見方ももちろんありましたが、もう一点おもしろいと思ったのは「結局、人は敵と味方に分かれて生きていかないといけない」という皮肉さが描かれている点。観る前はレイフ・ファインズが演じるコリオレイナスが悪人なのかと思いきや、筋が通った人間のように思いました。もちろん、強情で傲慢ではありますが、表面だけで中身が薄っぺらい政治家よりもよっぽど共感できる意志を持っています。また、本作で登場する国民たちがあまりに意志がなくあまりに容易に扇動されているように描かれていたので、余計にコリオレイナスが正当化されて見えました。これは演出上の戦略だとしたら成功だと思います。コリオレイナスに対して、同情と反感の両方の感情を持つことがこの作品のおもしろさなんだと思います。筋は通っているけれど、社会とうまくやっていけない人、あまりに強情すぎて受け入れられない人っているな〜とつくづく思いました。結局のところ、1人で英雄としての誇りを守ろうがどうしようが、彼の誇り高き人間性なんて周囲にはどうでもよくて、結局どっちの味方なんですか?ってところでしか、判断されないという社会の苦さを感じさせるストーリーでした。 と、真面目に観た部分ではそんな感想でしたが、ほかおもしろかったのは、敵のオーフディアスがあれだけ恨んでたくせに、ロン毛になったコリオレイナスが目の前に現れても気付かず、しつこく名前を聞くシーン。いくらなんでも髪伸びたくらいで、宿敵やったら気付かなあかんやろと思いました。ま、とにもかくにもあんなに髪が伸びたレイフ・ファインズが久しぶりだったので、そんなところもちょっとしたみどころです(笑)。 |
デートで観るって感じではないですが、思ったほど戦争映画でもなく、シェイクスピアの作品をもとにしている点で文学作品として観るならば、知的カップルには良いのではないでしょうか。あとシェイクスピア作品は、母と息子がキーになっている設定が多いですが、今回もそうです。この人、マザコンかしらと疑わしい彼、旦那を連れていってみましょう。母と息子のシーンでうるっときていたら、その気があるかもです(笑)。まあ、母を大事に思うのはステキなことなので、あくまでおもしろ半分で診断してみてください。 |
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©Coriolanus Films Limited 2010
2012.2.25 TEXT by Myson