TOP > 映画批評TOP > 映画批評ア行 > HERE

エクソダス：神と王

2015年1月30日より全国公開
20世紀フォックス映画
公式サイト　

以前エジプト旅行に行った際に神秘に満ちた国だと実感したので、本作に描かれている神秘的な出来事もあまり違和感なくリアルに感じ、とても引き込まれました。そもそもモーゼのお話自体が興味深いので、同じ旧約聖書にある「出エジプト記」を原作に映画化したチャールトン・ヘストン主演、1956年の映画『十戒』と観比べてみましたが、『十戒』はタイトルのとおり“十戒”に焦点を当てており、本作『エクソダス：神と王』はモーゼというキャラクターの英雄伝に焦点が当てられています。設定やストーリー自体も違っている点が多々あり、モーゼやラムセスのイメージも異なります。クリスチャン・ベールが演じる本作のモーゼは、見た目もカッコ良く、モーゼと女性の関係においてもロマンチックに描かれています。当然ながら本作の方が現代的に作られているので観やすい印象で、女性についての描写もソフトです。一方『十戒』では、女性が冷遇されている状況がいろいろな場面で描かれていて、モーゼの描写も美化し過ぎておらず、原作の宗教色を強く残して描いている印象です。『エクソダス：神と王』の方がよりエモーショナルで、モーゼは感情移入しやすいキャラクターとして描かれており、宗教色も抑え気味なので、観やすいと思います。好みはそれぞれだと思いますが、両作品を比較して観るとおもしろさが倍増しますよ。本作は『十戒』のリメイクというのではなく、別の物として楽しんで頂くのが良いと思います。
また奴隷となって働くヘブライ人を苦しめてきた壮大な神殿建設はストーリーのポイントともなりますが、この建造物の大きさを体感して頂くと、ヘブライ人が背負った苦悩がよりリアルに感じられ、エジプトが持つ神秘性も感じられると思うので、劇場の大きなスクリーンで観ることをオススメします。エジプシャン・メイクを施したジョン・タトゥーロや、ジョエル・エドガートンの変身ぶりにも要注目ですよ！

ドラマチックなストーリーで、アクション映画としても見応えがあるので、誰でも楽しめる内容です。ラブストーリーの要素も少しありますが、いやらしいシーンはなく、良い具合にロマンチックなシーンがある程度です。友達以上恋人未満からベテランカップルまでどんなカップルでも大丈夫です。最低限の知的レベルを相手に期待する人は、誘うときに「モーゼ」「十戒」という言葉に相手がピンとくるかどうかチェックしてみましょう。

歴史の勉強が苦手というティーンも、こういう映画を観ることで興味を持てると、頭に入りやすくなります。このストーリーが史実通りというわけではないですが、当時のエジプトの情勢や、宗教的な民族問題などを背景に描いています。歴史を知ると、エンタメや芸術、文化をより楽しめるので、勉強にやる気を起こすきっかけにするのもアリだと思います。

2015.1.20　TEXT by Myson