2015年11月27日より全国公開
ギャガ
公式サイト
この世には信じられない実話が本当にたくさんありますが、これもその1つ。そして、またしてもそれはナチスの侵略による犠牲から生まれた悲劇だったとは驚きです。同じく2015年秋に日本公開の『ミケランジェロ・プロジェクト』もナチスに略奪された美術品を巡る実話をもとにした作品なので、ぜひ合わせて観て欲しいと思います。 本作は、20世紀の終わり、アメリカに暮らす82歳の女性マリア・アルトマンが、19世紀の美術界で一世を風靡した画家グスタフ・クリムトの代表作で、世界で最も高額な絵画ベスト10に入る“黄金のアデーレ(正式名:アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像T)”の返還を求め、オーストリア政府を訴えるという物語。マリアは、肖像画のモデルとなったアデーレの姪で、彼女が肖像画の返還を求めた意図は金銭的な理由ではなくもっと深い意味がありました。ナチスの迫害から逃れるために家族を残してオーストリアから亡命したマリアが過去と向き合う物語でもあり、彼女を助ける若き弁護士ランドル・シェーンベルクの戦いと成長の物語でもあり、この2人の物語が交差することによって、ただ絵画を取り戻す法廷劇に留まらず、世代を超えて歴史と向き合い、自分のルーツ、自分の生き方を問うストーリーになっている構成が見事です。そして、やはり主演のヘレン・ミレンの演技が素晴らしい!頑固だけれどユーモラスでチャーミングなマリアのキャラクターに、誰もが魅了されてしまうと思います。そして、若き弁護士ランドルを演じたライアン・レイノルズの役作りにも気合いを感じました。ライアンって、マッチョなイメージがありましたが、本作では一見ナヨっとした優しい青年をリアルに演じています。 絵画に興味がなくても、こういう映画を通して、その背景になるドラマを知ると、とても興味をそそられます。愛国心、ルーツ、家族、いろいろなテーマで考えさせられる深いドラマ、ぜひご覧ください。 |
デートにもオススメの一作です。絵画の知識がなくても、誰でも楽しめるストーリーで、ラブロマンスの要素がほとんど無い点で、逆にどんなカップルでも観やすいと思います。本作を観て、クリムトってどんな画家だったんだろうと興味を持ったら、次のデートでは美術館に行ってみたり、図書館で調べてみたり、2人で教養、知識を増やしていくきっかけにすると良いでしょう。また、ラブロマンスは無いとは言え、本作に登場するランドルの夫婦の姿は、自分たちに置きかえて観てみるのも有意義です。信念を持って行動するパートナーを支えられるのか、お互いの価値観を語ってみても良いのではないでしょうか。 |
絵画の知識があまり無くても楽しめるとは言え、ヒトラー、ナチスについて大まかな歴史は知った上で観た方が理解しやすいです。中学生以上なら理解できる内容なので、こういう作品から逆に歴史に興味を持って、自分でより深く歴史や美術品について調べてみたり、知識を増やすきっかけにすると良いでしょう。また、美術品をどこに保持するかという問題が、愛国心にどう関係するのかや、それがどんな政治的価値を持つのかなどにも目を向けると、芸術品の存在価値を多角的に見ることができておもしろいですよ。 |
関連記事:
■知恵と知識:歴史的人物や歴史を探る2ー世界を揺るがしたヒトラーとアートの関係
■TJE Selection イイ男セレクション/ライアン・レイノルズ
■TJE Selection イイ男セレクション/ダニエル・ブリュール
©THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015
2015.11.24 TEXT by Myson