2014年12月20日より全国公開
ショウゲート
公式サイト
ロマン・ポランスキー監督、さすが!うまいわ〜。映画の舞台が劇場だからか、自分も2人がいる劇場に座って彼らのやりとりを生で観ているような臨場感があり、見事な会話劇に没頭してあっという間でした。 舞台の演出家と、オーディションを受けにきた女優の二人だけで展開する物語。オーディションが終わり、劇場から去ろうとする演出家トマ・ノヴァチェクの前に、雨のなか急いで駆けつけたワンダが現れます。舞台の主人公と同じ名前のワンダは、コートを脱ぐと娼婦のような格好をしていて、年齢もそこそこ。この日のオーディションで良い女優と巡り逢えなかったトマは、一目見てワンダも他の女優と変わらないとオーディションをせずに帰ろうとします。でもワンダは食い下がり、強引に読み合わせ、立ち稽古を進めるうちに、トマはワンダがこの作品を深く理解していると思い始め、彼女に夢中になっていきます。 初めは「面倒くさいおばちゃんが来た!」と思ってコメディとして観ているのですが、2人の立場がだんだんと逆転し、ワンダのペースになっていきます。それは恐ろしくもあり気持ちよくもある、絶妙なアメとムチのような感覚(笑)。そんなSM要素をこちらもちょっとだけ体感しながら展開していくのですが、台本にあるセリフなのか、実際の2人のあいだの会話なのかも境界線がわからないくらい、ワンダは巧妙に劇中のキャラクターの姿を借りて、トマ・ノヴァチェクの本性を剥いでいきます。それはゾッとすると同時に、女子としては爽快感も味わわせてくれるのですが、きっとトマもある意味“完璧な負け”が気持ちよかったのではないかと思えるほど見事です。近年のロマン・ポランスキー監督作では『おとなのけんか』もそうでしたが、会話劇としてすごくおもしろくて、随所に込められた会話のトリックが心地良かったです。ワンダを演じたエマニュエル・セニエは、1966年生まれのフランスの女優さんですがスタイルが抜群で、ワンダのキャラクターにぴったりの、熟女の美しさと図々しさを見事に表現していました。一方追い詰められていくマチュー・アマルリックもすごく良い味を出していましたが、このような作品は俳優の実力がないと成立しないので、2人がいかに名演かがわかります。女子の皆さんは、この名監督と名優たちの作品で、ぜひスカッとしてください。M男にもオススメです(笑)。 |
ある意味で女の逆襲とも言える内容ですが、軽いノリで楽しめるのでデートで観てもオーケーでしょう。男女で感想を語り合うと楽しい映画だと思います。 2人しか登場しない物語で、片方はセクシー熟女ですが、気まずくなるようなイヤらしいシーンはありません。SM要素も多少折り込まれていますが、具体的なプレイが出てくるわけでもなく、基本会話でのやりとりなので大丈夫でしょう。でも彼、旦那が隠れM男の場合は、目覚めさせてしまう恐れがあるので覚悟の上で鑑賞を(笑)。 |
観てはいけないような過激なシーンはありませんが、キッズには理解が難しいと思います。中学生もまだピンとこないかも知れません。おませな高校生や大学生くらいになると、本作のおもしろさもわかってくると思いますが、人は見た目では判断できないということや、立場が逆転する様子、人の本性が出てくるきっかけなど、本作で人間ウォッチングしてみれば、物事を観る視野が少し広がるのではないでしょうか。 |
関連記事:
■TJE Selection イイ男セレクション/マチュー・アマルリック
©2013 R.P. PRODUCTIONS – MONOLITH FILMS
2014.12.1 TEXT by Myson