2016年8月6日より全国順次公開
ピクチャーズデプト、アークエンタテインメント(配給協力)
公式サイト
『神のゆらぎ』とタイトルにあるように、信仰心が大きく関わったストーリーです。輸血をできないエホバの証人である女性看護師、彼女のフィアンセ(グザヴィエ・ドラン)やその家族、そして飛行機事故に遭った人や周囲の人々にまつわる群像劇なのですが、物語の軸は女性看護師です。最初は何の繋がりがあるのかわからない人物達が、物語が展開するにつれ、徐々に繋がりが見えてきて、不運に見舞われた人達が神の存在に疑念を感じたり、教義に添った生き方を死守すべきか、教義に背いてでも今できることをやるべきか悩む姿が描かれています。物語のクライマックスでは、輸血をすれば助かる可能性があるとわかっていても、輸血が教義に反することから、輸血をしてあげることも、受けることもできないという事態で、関わる人物達がどういう決断をするのかが争点になっており、本作のテーマを集約しています。信仰心と、現実的に目の前にある状況をみて行動を起こそうとする良心とを天秤にかけるような状況を観ていて、とても心が痛みました。また、教義に反する行為をすると、それがどんな理由であれ他の信者から阻害され絶縁されてしまうという厳しい方針に、「そこまでしなくても…」という切なさがありました。ただ、それぞれの宗教にはそれぞれの考え方があり、私はそれに対して深く知っているわけでもなければ、信者の方々の気持ちを想像することも難しいので、その宗教と、信仰心を否定するつもりは全くありません。私自身は特定の宗教は持っていませんが、神と言おうか何と言おうか、人知を越えた力はこの世に存在していると思っているし、そういう力にすがりたくなる気持ちもわからなくもありません。でも、本作での宗教に限定せず、いつも思うのは、“見えない存在”に直接聞いたわけでもなく人間の解釈でできた教義に、どこまで縛られるべきなのかということです。正しい答えは人それぞれなので、本作で描かれている物語についてどう思うかも人それぞれですが、特定の宗教の信者でなくても、人としてどう生きたいかを考えさせられる見応えのある作品であることは、間違いないと思います。 |
本気で交際するつもりの相手なら、宗教観もちゃんと話しあうべきだと思うので、将来結婚を考えている人は、この作品を機にお互いの宗教観について話してはどうでしょうか?日本は無神論者が多いと聞きますが、同時に宗教の話が非日常的なせいか、こういう話題がタブー視されている気がします。でも、宗教は、家族との関係や、生活、しきたりなどにも大きく関わってくることなので、避けては通れないところ。早い段階でこういう話をして、お互いに時間をかけて理解できるようにして欲しいし、劇中でも婚約中のカップルのストーリーがあるので、ご参考に。 |
宗教にまつわるお話なので、キッズにはまだ難しいと思います。中学生くらいになれば理解できると思いますが、偏見を持たずに、あらゆる登場人物の立場になって、心情を想像してみてください。また、簡単で良いので、観る前にエホバの証人について、調べてみると良いでしょう。世界に目を向けると、さらにいろいろな宗教がありますが、信者になるという意でなくても、どんな背景があるのかを知ることは、これから大人になっていろいろな人とコミュニケーションをとる上で、とても大切だと思います。 |
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2016.7.11 TEXT by Myson