2015年2月21日より全国公開
ファントム・フィルム
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名脇役として活躍するウィリアム・H・メイシーが初めて監督に挑んだ本作。これまで生徒による学校の銃乱射事件を題材にした作品は複数ありましたが、本作のテーマはそのなかでも遺族となった親に焦点を当てた物語。とてもデリケートな内容だけに初監督にしてこのテーマを選ぶというのはとても挑戦的だと思いますが、きっと自身も子を持つからなのかも知れません。そんな本作には、彼の実生活の妻で『デスパレートな妻たち』でもお馴染のフェリシティ・ハフマンも出演していますが、彼女がビリー・クラダップが演じる主人公サムの妻を演じている点も興味深いです。 銃乱射事件で亡くなった息子が遺した歌を、その父が引き継ぐという設定だけ聞くと感動的な物語だとイメージしますが、本作はそんな単純なものではありません。息子がこんな形でこの世からいなくなった現実と親はどう向き合うのかを描きつつ、同時に、誰が作った曲かを知らずに歌に魅了されどんどんと変化していく青年クエンティンの人生とクロスさせることで描きたかったものは一体何なのか。解釈はいろいろあると思いますが、絶望と希望の両方が描かれている本作は、親として自分の子どもにもう何もしてあげられなくても、まだできることはあるという救いを示しているように感じました。お子さんがいる方が観るともっともっと複雑な感情になると思いますが、子どもがいなくても子どもを持つということの重みを痛感させられます。本作に出てくる“息子が遺した歌”の歌詞がどれもとても意味深く、ズシッとくるワードが耳に入ってくる度に思いにふけってしまうくらいのインパクトがありました。ぜひ歌詞などにも注目しながら観てください。あと、クエンティンを演じたアントン・イエルチンの演技がすごく印象的でした。これからが楽しみな俳優の一人としてぜひ覚えてください。 |
学校で起きた銃乱射事件で子どもを亡くした男のストーリーというだけで、デート向きの軽い内容でないことは想像できると思いますが、これから結婚しようという2人、もしくは夫婦なら、こういう題材の映画を一緒に観て会話することは有意義だと思います。前半は途中笑える部分もあるので後半の展開は想像もつきませんでしたが、平穏に暮らしているうちには経験しようもない感情を映画を通して体感できます。テーマはかなり深くて重いですが、本作を一緒に観ることで共有できる感情は有意義なものになると思います。 |
主人公サムの視点で観るのも良いと思いますが、ティーンの皆さんは、サムの息子や、クエンティンの心情の方が世代も近いのでよりリアルに感じられるでしょう。自分自身が彼らと全く違ったタイプでも、学校の周囲を見渡せば、同じようなタイプの人で誰か思いつく人がいるかも知れません。同じ世界を見ていても、心が違えば見え方が違う。そういった想像力を働かせて観てみてください。キッズにはまだ難しい内容ですが、大きくなったらぜひ観て欲しいです。 |
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2015.2.3 TEXT by Myson