2016年4月9日より全国順次公開
アルバトロス・フィルム
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すごく不思議な世界観を持つ作品でしたが、オランダならでの空気感なのでしょうか。主人公の1人テオは、絵本のなかのキャラクターのような滑稽なキャラクターでしたが、可笑しい半面、切ない空気を漂わせています。先日ディーデリク・エビンゲ監督にインタビューした際、テオ役のルネ・ファント・ホフはオランダでは人気のコメディ俳優だとおっしゃっていましたが、やはり良いコメディ俳優は、紙一重となる喜劇と悲劇を演じるのが上手ですね。そしてトン・カスが演じたほぼ無表情の孤独な男フレッドは、リアクションは抑え気味なのですが、心の変化は細かいところに表れていて、脚本、演出、俳優の演技の上手さを感じました。特に気になったのは、電話での話し方。ちょっとしたことなのですが、要領が悪くぎこちない話し方をしていたフレッドのセリフの変化に、彼のコミュニケーションの仕方の進化が感じられ、繊細に描かれている点でも本作に共感できます。 最初は一見得体の知れないおじさんの奇行に戸惑うし(笑)、女装、ゲイを匂わせる要素が出てきて、どっちの方向に行くのやらと思ってしまいますが、失ったモノへの悲しみと、心の帰る場所、許しを描いた、ほっこりできる作品でした。「なんでやねん!」と思える展開もありますが、決まり切った日常から、生き方を変えて新境地に向かうおじさん二人の進化を観て、孤独から解放されてください。 |
おっさん2人のすったもんだを描いている物語なので、ラブストーリーではありませんが、温かい人間愛を観られるという意味では、2人で一緒に観て癒されるのもアリだと思います。でも正直展開の起伏は緩やかで、どちらかというと地味なストーリーなので、ど派手なアクションやサスペンスでないと充実感が得られないというタイプの人を誘うには不向きです。ミニシアター系が好きそうな相手ならオーケーでしょう。 |
キッズやティーンの皆さんには、正直まだピンとこない内容だと思います。表面的には理解できるかも知れませんが、その奥にある人間心理の変化などに共感できるのはやっぱり大人になってからかなと思う内容です。でも本や映画が好きでたくさんの作品に触れてきた人や、哲学的なモノの見方、抽象的な描写が好きな人は、だんだんこういう作品も観てみると良いと思います。 |
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■ディーデリク・エビンゲ監督インタビュー
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2016.4.4 TEXT by Myson