今回は、ロッテルダム国際映画祭ほか観客賞を多数受賞しているオランダ映画『孤独のススメ』のディーデリク・エビンゲ監督にスカイプでインタビューをさせて頂きました。取材中にひょっこりオフィスにプロデューサーさんが訪れてご挨拶頂いたり、和やかな取材で楽しかったですが、その空気感が本作にも活きています。
PROFILE
1969年5月9日、オランダのオーファーアイセル州エンスヘーデに生まれる。1995年にスクール・フォー・ドラマ&コンテンポラリー・ミュージック・シアターを卒業し、2006年に短編映画『Naakt(原題)』を初監督。続いて2008年に短編『Succes(原題)』を発表、フランスのクレルモンフェラン映画祭でコメディ賞を受賞した。この作品に、トン・カス(フレッド役)とルネ・ファント・ホフ(テオ役)が出演したことがきっかけで初の長編作品『孤独のススメ』を撮る。俳優としても、『イップ 翼をもった女の子』(2010)、『Bonnie Stout!(原題)』(2011)などに出演。
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マイソン:
本作はテーマは孤独なのに、とても楽しい映画に見えました。
エビンゲ監督:
確かに一般的に“孤独”というと良くないイメージかも知れませんが、何かしら光をもたらしたいと思いました。ヘビーな内容をヘビーにするのはあまり好きではないので、可笑しみを入れたいと思いました。
マイソン:
なるほど。劇中でフレッドとテオが童謡を披露するシーンが出てきましたが、あれは実際にオランダにある歌なんですか?
エビンゲ監督:
オランダの子ども達が皆知っている歌ですよ。
マイソン:
カエルの歌がやや怖い内容だったのですが(笑)。
エビンゲ監督:
確かにそう言われればそうですね!
マイソン:
子ども達は特に内容が怖いと思わず楽しく歌っているんでしょうか(笑)?
エビンゲ監督:
そうですね、怖がっていません。全然歌詞まで考えていないと思います。僕も今初めて考えました(笑)。
マイソン:
では、メインの2人のキャラクター設定でこだわった点は?
エビンゲ監督:
あまりにも双方に違いがあるので、バランスを取るという意味では少し難しかったです。フレッドはいろんな変化を求めている男で、テオは子どものように誰も気付かない些細なことでも興味を持ったりするキャラクターです。テオを演じた役者はオランダでも有名なんですが、彼の肉体的な演技が、僕は大ファンで、本当にすごいインパクトを与えながら些細な演技をやってのけるんです。2人とも、目を見ているだけでも悲しみが伝わったり、とても繊細なものを強く伝えられる役者です。
マイソン:
テオはセリフがすごく少なかったのですが、もともとそうだったのか、あの役者さんだから少なくしたのか、どうだったのでしょうか?
エビンゲ監督:
セリフが少ないのはもともと意図していたところで、彼は最高の役者で、言葉以外で演技をするのに長けているし、しゃべらないときのほうが、逆にうまいぐらいで、インパクトがあるんです。
マイソン:
では、本作の邦題は『孤独のススメ』となっていますが、国によって、映画の題名が変わることについてはどう思いますか?
エビンゲ監督:
原題の“MATTERHORN”は有名な山の名前ですが、もしマッターホルンを知らない人がいるなら変えても仕方がないと思います。僕は(各国でこの映画を扱うスタッフを)信頼しているので、僕が意見をする立場ではないと思うし、有効なほうを選ぶのが良いと思います。それぞれに感情のあり方が違うと思うし、国によって題名が違うのはおもしろいですよね。
マイソン:
数々の国で映画賞をたくさん受賞していますが、海外の観客の感想などで印象に残っていることはありますか?
エビンゲ監督:
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)について示唆した質問をされることに驚きました。映画のテーマとして、そのことは全く考えていませんでしたし、オランダではあまりに普通のことなんです。もちろんとてもおもしろい良いテーマだと思いますが、本作はホモセクシャリティとかLGBTという部分に限定されたものではないので、逆にそういう反応がおもしろいと思いました。
2016年4月9日より公開
監督・脚本:ディーデリク・エビンゲ
出演:トン・カス/ルネ・ファント・ホフ/ポーギー・フランセ/アリアネ・スフルーター
配給:アルバトロス・フィルム
一人静かに規則正しい生活を送るフレッドの前に、ほとんど言葉も話さず素性が全くわからないテオという男が現れる。テオの子どものような振る舞いに最初は戸惑うフレッドだったが、家に居着いてしまった彼とそれなりにうまく暮らせるようになっていく。だが保守的な村の住民達は、彼らの同居を異様な目で見始め、追い出そうとする。
公式サイト 映画批評/デート向き映画判定
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