2015年5月23日より全国公開
ビターズ・エンド
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一人の社員の復職を、同僚の投票を決めるという斬新で残酷な設定にまず興味が湧きました。投票の内容は「サンドラが復職するのを望むか、サンドラを解雇にしてボーナスをもらうか」というもの。本作は、復職をかけて同僚を説得するサンドラの週末の様子を描いたドラマですが、「復職に票を入れてくれそうな人が今何人いて、残り何名説得すれば復職できる」というような展開が目の前で起こっているかのごとくドキュメンタリーのようにリアルに進行していきます。本作の監督であるダルデンヌ兄弟はあまり有名な俳優を起用しないようですが、本作では珍しくマリオン・コティヤールを起用。彼女自身ダルデンヌ監督からのオファーに驚き、「到底叶わない夢だと思っていた」と出演をとても喜んでいたようです。先日来日した監督お2人にインタビューをさせて頂いた際にもこの点を聞いてみましたが、俳優が無名でも有名でも自身で持っているセルフイメージを完全に取り払うところからやってもらうそうです。こういった監督のこだわりと、マリオンの女優としての力量が一つになれば、そりゃ最強なこと間違いないですよね。サンドラというキャラクターはとても後ろ向きな女性で、たしかにこういう状況なら仕方がないと思えるのですが、ネガティブさがあまりにリアルで観ていてイライラし、マリオンさすが!という感じでした。だから良い意味で最初はサンドラにほとんど共感できないまま観ていたのですが、結末では、週末だけの短い期間に人はこれだけ成長し変化するのだなと清々しい気分になりました。日々孤独な戦いに疲れている方の視点をちょっと変えてくれるストーリーです。 |
最終的には前向きになれるストーリーなのですが、いつクビになるかわからない、いつ契約を切られるかわからないという状況の人や、就職や転職で行き詰まって真っ只中という人が観るには少々辛いテーマです。そういう人はデートなのにすごく現実の世界に引き戻されて楽しい気分になれないと思うので、今は誘わない方が良いでしょう。逆に職の心配よりも人間関係で悩んでいる人を、視点を変えるきっかけとして誘ってあげてください。 |
キッズにはまだピンとこない内容だと思いますが、小学校高学年以上なら、ストーリーは理解できると思うので、興味があるなら観てみると良いでしょう。働いて稼ぐということがいかに大変かがわかると思うので、お父さんやお母さん、家族の人の苦労も少し想像できるでしょう。また、自分が悲観的になり何もしなければ周囲も何も変わらないけれど、自分から動いて変わろうとすればそれに応じてくれる人たちもいるということを、サンドラの変化から感じ取って欲しいと思います。 |
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© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma
2015.5.19 TEXT by Myson