2014年11月14日リリース/R-15
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モントリオール世界映画祭にて最優秀監督賞を受賞し、第87回米国アカデミー賞外国語映画賞部門の日本出品作品に決定(日本社団法人日本映画製作者連盟による選考/2014年9月現在)したことが発表された本作。これを受けて、国内各地でアンコール上映も実施。主演の綾野剛人気もヒットに繋がっていることはもちろんのこと、ここまでのヒットに繋がったのは映画そのものが良いからに違いありません。『そこのみにて光輝く』というタイトルから、それが何を意味するのか考えながら観ましたが、そこでしか生きられない人間たちを指しているようにも思えるし、その世界がどんなに荒んでいてもそこで必要とされている=光輝けるという意味にもとれたり、いろいろな解釈が楽しめます。決して幸せには見えない世界で生きている主人公たちが、彼らの世界をどう受け止め、それを壊していくのか壊さないのかを見届けながら、観ている側も例えようのない圧迫感でいっぱいになります。そして、人間が生きていく上での“家族”という存在の意味を描いたストーリーは、家族がもたらす呪縛と素晴らしさという両極を描いていて、それをどう受け取るかを観客に委ねているようにも感じました。 ストーリーと描写がとても素晴らしい作品でしたが、同時に俳優たちの演技も称賛に値します。絶望で身動きが取れず堕落寸前まで落ちている主人公を演じた綾野剛、自分の人生を生きるなんて選択肢がほぼない状況のなかで諦めと覚悟、そしてある種のプライドを持って生きている女を演じた池脇千鶴、自分の存在価値を見出せずにいながら家族を思い不器用に生きる青年を演じた菅田将暉、彼らの演技には本当に惹きつけられるものがあり、彼らの演技力なくしては、このクオリティにはならなかったと思います。家族を持つことの良さと覚悟を思い知らされ、自分の人生についてもいろいろと考えさせてくれる作品です。ぜひ男女問わず観て欲しいです。 |
濡れ場がところどころあり、それ以外にも性的描写が出てくるので、ウブなカップルには気まずいかも知れません。明るい内容ではないので、ウキウキしたテンションで過ごしたい日のデートには向いていませんが、家族とは何かを描いた作品なので、結婚を真剣に考えているくらいの本命とのデートで敢えて観るのも良いかもしれません。何でも語れる仲なら鑑賞後に意見交換しても良いと思いますが、敢えて言葉にせずにそれぞれに覚悟を持ってお互いの存在の大切さを感じるきっかけにするだけでも良いのではと思います。 |
R-15なので、15歳未満の人には観られません。15歳以上の鑑賞可能な年齢の人のなかでも、生活環境によって感情移入できる度合いに差が出てくると思いますが、家族関係で何らかの悩みを抱えている人にとっては切実に感じる部分が多くあると思います。家庭、生活環境に恵まれている人は、こういう現実もどこかにあるということを知れば、自分に選択肢がある人生がいかに有難いかがわかると思います。家族の存在の重みを感じさせるストーリーなので、今の自分の家族についてや、将来自分が持ちたい家族についてなど想像してみるのも良いでしょう。 |
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©2014佐藤泰志/「そこのみにて光輝く」製作委員会
2014.9.17 TEXT by Myson