2015年5月16日より全国公開
ショウゲート
公式サイト
ツイート
本作は、『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』『Dr.パルナサスの鏡』など独特の世界観で映画ファンを魅了してきたテリー・ギリアム監督の最新作。監督の作品と言えば、精神世界に連れて行ってくれるような不思議な物語が多いですが、本作もまさに人間の頭のなか、心のなかに連れて行ってくれるような世界観が描かれています。本作の主演はスキンヘッドのクリストフ・ヴァルツ。彼が演じる天才プログラマーのコーエン・レスは、コンピューターで世界を支配する大企業マンコム社で「エンティティ解析」を担当していますが、なかなか会席が進まないなか、ある電話がかかってくるのをひたすら待っています。外の賑やかな世界とは真逆の一見神聖な建物のなかに静かに1人で暮らしている彼ですが、1人の女性や少年などが彼を訪ねてきたのをきっかけに彼の生活が変化していく様子が描かれていきます。やっぱりテリー・ギリアム監督ならではの難解さが今作にもあるのですが、監督の作品は一つ一つの描写が何を意味しているのかを考えるのが楽しいんですよね。作家の意図はさておき、私は本作を観てサミュエル・ベケットの戯曲“ゴドーを待ちながら”をまず思い浮かべましたが、いろいろな設定やセリフのなかにいくつも不条理な要素が出てきて、それをどう解釈すべきか考えることで、人間とは何かを少し知られるような感覚を堪能できました。とはいえ「人間とは何か」なんて人間の永遠のテーマなので明確にこれだという答えがこの映画で語られているわけではありません。それはこの映画を観た人がそれぞれに何か感じるものであって、そのきっかけを与えてくれる作品です。本作をどういう思いで作ったかは、監督が来日した際にも語られていますので、ぜひその記事もお読みになって、何度も観て、観た人同士でも語り合って、楽しんでください。 |
テリー・ギリアム監督の作品を観たことがある方は何となく想像が付くかも知れませんが、決してわかりやすい映画ではありません。なのでわかりやすい映画を好む人を誘うとキョトンとしてしまう可能性があります。この手の映画はやっぱり観終わった後に語るのも醍醐味なので、あまりにも自分が観ている感覚とかけ離れていたらお互いに不完全燃焼になってしまうので、こういう映画を観慣れている人を誘う方が良いでしょう。気まずいかどうかという点では、多少ヌードも出てきますが、直接的にエロの要素として出てくるわけではないので、よっぽどウブな人で無い限り、そこは心配は無用です。 |
キッズやティーンにはかなり難解だと思います。でも本作にすごく興味のあるティーンの皆さんは、物語の意味を完全に理解したいと力まずに、まずは世界観だけでも楽しむくらいのスタンスで観ると良いでしょう。明確な一つの答えがある映画ではないので、ぜひ友達や家族と一緒に観て語り合うと、他の視点も見えてきておもしろみが増すし、こういう映画の楽しみ方が少しわかると思います。 |
関連記事:
■来日イベント、テリー・ギリアム監督
■TJE Selection イイ男セレクション/クリストフ・ヴァルツ
■TJE Selection イイ男セレクション/デヴィッド・シューリス
■TJE Selection イイ男セレクション/ルーカス・ヘッジズ
© 2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
2015.4.8 TEXT by Myson