ヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』はとても好きな作品なので、あの独特のエグさが本作にもあるだろうと期待していたら、やっぱり期待通り!ランティモス監督作には動物がキーにされることが多いですが、本作でもウサギが印象的に使われていて、そういった点でもファンのツボをちゃんと抑えています。もちろん特別監督のファンというのでなくても、本作は過去作に比べてとてもわかりやすいのでご安心を。人間の狡猾さと同時に逞しさが巧みに描かれていて、時代や境遇は違えど、女子なら誰でも身近に感じられるドロドロの人間ドラマが観られます。そして、何といってもオリヴィア・コールマン、レイチェル・ワイズ、エマ・ストーンの演技が見事。彼女達が演じるキャラクターは、それぞれに違った闇を心に抱えていて、女の醜いやり取りが生々しくてゾッとします。特にレイチェル・ワイズが演じるレディ・サラと、エマ・ストーンが演じるアビゲイルの野心むき出しのバトルは、女ならではの頭脳戦で観ていて恐ろしくなります。そして、一見オリヴィア・コールマンが演じるアン女王は、2人に踊らされているように見えるのですが、不動の立場にいる強みで2人を振り回す姿はそれはそれで怖いです。「えらいもん、観てしもた」という感覚をぜひ味わってください! |
男性キャラも登場しますが、本作は女性が主導権を握っている世界を描いていて、男性がないがしろにされるシーンは複数あり、男性目線では複雑な心境になるかも知れません。女性は「こういう女、いる!」と共感できるポイントが多数あると思うので、女子トークのほうが盛り上がりそうな作品です。なので、デートで観るより、友達と観るか、1人でじっくり観ることをオススメします。 |
性的な描写が若干あり、ちょっと子どもには刺激が強いのではと思うシーンがあります。PG-12とはいえ、同伴で観る保護者側のほうが逆に気まずくなる可能性もあるので、中学生以上向けということで良いのではないでしょうか。ここで描かれているストーリーは史実から脚色されてはいますが、アン女王、サラ、アビゲイルは17世紀後半から18世紀前半に実在した人物です。イギリス史に興味を持つきっかけに観ると、一石二鳥です。 |