2016年8月13日より全国順次公開
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ブラジルのサンパウロ最大のファヴェーラ(スラム街)に暮らす少年少女達で結成された“エリオポリス交響楽団”。その誕生を描く本作は、今日を生きるだけで精一杯だった彼らが、一人の教師との出会いをきっかけに人生に希望を見出していく、実話に基づく物語です。監督と脚本は、1998年に日本公開されたブラジル映画の名作『セントラル・ステーション』で助監督を務めたセルジオ・マシャード。ブラジルの現状をリアルに描いたという本作では、貧困にあえぐ子ども達の過酷な生活環境に驚きます。麻薬や暴力が横行し、学校に通うこともままならず、運命に抗うことを自然とあきらめて悪い方向へと流れていく…。子どもが未来を夢見ることができないというのは、なんとも悲しいことだと思いました。そんな彼らがクラシック音楽を通じて自らの人生を変える力を得ていく姿は、貧困に苦しむ人だけではなく、将来に不安を抱えるすべての人々にとって、どこか爽快に映るものがあると思います。日本でも貧富の差は広がっており、治安の悪化を感じる昨今。お金は本当に大切なものだと痛感しますが、それ以上に、精神的な豊かさを失わないことの重要さを本作は物語ります。 彼らを変えるきっかけとなる教師ラエルチを演じるのはブラジルの超人気俳優、ラザロ・ハーモス。ラエルチは決して熱血教師というわけではなく、彼自身もまた精神的に弱さを抱えていて、子ども達を教えることにより成長を遂げていきます。その内面を繊細に表現するラザロの演技にも、ぜひ注目してください。音楽好きな人にとっては、クラシックの名曲の数々と名門サンパウロ交響楽団の演奏を聴けるのも見どころです。ブラジルのヒップ・ホップシーンを牽引するアーティスト、ハッピン・ウッヂやクリオーロも登場し、ブラジルの豊かな音楽シーンを堪能できる作品でもあります。 |
音楽が好きなカップルには、ぜひオススメしたい作品です。劇中に流れるクラシックとヒップ・ホップの選曲がどちらも秀逸で、音楽への強い敬意とこだわりを感じます。貧困により荒れ果てた家庭の姿も映し出されるので、お金が揉めごとのタネとなっているご夫婦やカップルは、観ていて居心地が悪くなるシーンもあるかも知れません。何事も愛情で乗り越えられるように、これを機に2人でしっかりと話し合ってください。 |
キッズやティーンにもオススメの作品です。世界には辛い現実を必死に生きている子ども達がいることを知って、今の生活に感謝し、本当の豊かさについて考える機会にしてほしいと思います。ただ、教師と生徒の物語と聞くと、分かりやすく熱いストーリーを想像しがちですが、本作はどちらかというと淡々とした切り口で描かれています。小学生なら高学年くらいになってからのほうが楽しめるかも知れません。 |
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©gullane
2016.7.28 TEXT by min