2013年3月22日より全国公開/R-15
ファントム・フィルム
公式サイト 予告編
本作は、ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムスという俳優たちの演技力が特に光る作品。ホアキン・フェニックスは、路頭に迷い少し狂気に近い感覚を持ち、救いがたい人物フレディを演じています。冒頭から引いてしまうくらい卑猥で動物的な行動を取ったり、理性やモラルが足りないと思えるシーンが都度出てきますが、その様子がとてもリアルで、このフレディという主人公がどれほど扱いづらい人物なのか、普通の人なら手を差し伸べるのに躊躇してしまうのかがとてもイメージしやすく、物語に引き込まれます。それにホアキンの休業中の問題作『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010)のクレイジーなイメージと重なって、本作のキャラクターが余計にリアルに感じました。とにもかくにも、やっぱりホアキンは俳優業が一番ですね。そして、フィリップ・シーモア・ホフマンも素晴らしい。今作の脚本は執筆の段階から彼にアテ書きされたようですが、フィリップ自身は役作りにおいて作品の舞台となる50年代の人々の雰囲気、例えばノーマン・メイラーの小説に出てくるような人々や、オーソン・ウェルズなどをイメージしたそうです。新興宗教団体の指導者=マスターでありカリスマ性を持ちながら、心には弱さを同居させている繊細な人物を演じるのはとても難しいと思いますが、フィリップはとても見事に演じています。フィリップが演じたマスターと、ホアキンが演じたフレディの関係性が、とても特別なもので、マスターがフレディを救っているようで、実は逆にも見えるという、相互依存の関係性が見事に描かれています。 |
冒頭から結構卑猥なシーンがあり、途中エロいシーン、裸の女性が出てくるシーンなどがあるので、デートで観るのには微妙です。今回が初デートの人や、友達以上恋人未満の人、つきあって間もないカップルはきまずくなるかも知れません。映画としては見応えがあり、映画好きにはたまらない実力派キャストと監督の作品ですが、相手があまり映画に詳しくなかったり、普段見慣れていない場合、わかりやすいエンタメ映画ではないので、鑑賞後の充実感にギャップを感じる可能性があります。映画好きの友達と行くか、一人でじっくり観るのがオススメです。 |
R-15なので、鑑賞できる年齢のティーン向け映画かどうかを判定します。話の展開が難しいというのではなく、人間の奥深い部分を描いているので、「おもしろい」という反応とは違う部分で、おもしろい映画なのだと思います。この作品を観て何かを学ぶとしたら「何かを信じている人、全く信じていない人の違いは何か」ということでしょうか。大人が観ても少々難しい内容に思えますが、実体のないものを信じるということがどういうことなのかを考えるには良い題材だと思います。 |
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2013.3.8 TEXT by Myson