普段バレエの話題に触れることはあまりないので、彼のことはこの映画で知りました。彼が人並み外れたダンサーなのかどうかなんて、私みたいなど素人にはわからないだろうなと思いましたが、細かいことはわからないまでも、動き、跳躍力、表現力の高さがずば抜けているのは一目で伝わってきます。ウクライナ出身の彼は、家族の支えによって、ロンドンに渡り、19歳の時に史上最年少でロイヤル・バレエ団のプリンシパルになります。でも、心の支えだった家族が離ればなれになり修復できなくなってしまったことにより、心が折れた彼は人気の絶頂で電撃引退。彼がその後だいぶ荒れてしまった報道なども収録されていましたが、「踊りが上手だからって、強制されたくない」という言葉にあったように、才能だけあっても、“何のためにやるのか”を見失ってしまうと、誰でも前に進めなくなるのは同じなんですね。そこからまた這い上がり再びロシアで活躍しますが、数年後に引退を決意。彼の最後のダンスのつもりで撮った動画がYouTubeで1800万回以上再生され、また彼のバレエ人生は動き出したようですが、このMVに使われたホージアのヒット曲「Take Me To Church」の歌詞が、まさに当時のセルゲイの心をそのまま表現していると思える内容で、彼のダンスに魂の叫びのようなものをひしひしと感じました。踊りは大好きなのに、周囲の期待を背負い、成功したらしたで自由を奪われてしまったセルゲイ。大好きなことなのにその周りに複雑な事情が絡んできて、打ち込めなくなるということは誰にでもあり得ることですよね。彼はその苦しみを何度も繰り返して、やっと少し霧が晴れたところまでやってきたのかなと、親近感がわきました。本当に見とれてしまうような超人的な動きをするので、踊っているシーンだけ観ても充分に楽しめますが、天才ゆえに苦悩する姿は、私のような凡人にとっても学ぶべきところがあります。バレエを全然知らないという人でも楽しめるので、観てみてください。 |
ドキュメンタリーなので、ムードを盛り上げたいデートに向くかと言われれば、そこは期待できませんが、気まずいということもないので、2人とも興味があるならデートで観るのもありだと思います。鑑賞後はお互いに、子どもの頃の自分の夢や、今好きな事をやれているかなど、語るきっかけにもできますね。 |
子どもの頃に自分が好きな事に出会い、それがすごく得意だとわかるのは、本当に幸運です。でもどんなに才能に恵まれていても、絶対に壁にぶつかります。そして才能に恵まれれば恵まれるほど、その世界に深く生きていく事になるので、それをやめたくなっても簡単にやめられません。そんな苦悩を描いたドキュメンタリーなので、今の皆さんが観たら、将来についてすごく参考になると思います。バレエダンサーになりたいという人に限らず、根本は誰にでも共通する内容なので、ぜひ観てみてください。 |